2010-01-01から1年間の記事一覧

『使命と魂のリミット』

帝都大学病院に脅迫状が届いた。「隠している医療ミスを公表し、謝罪しなければ病院を破壊する」。そのような事実は無いと断言する心臓血管外科の権威、西園陽平教授。しかし彼の下で働く研修医の氷室夕紀は、西園に対してある疑念を持っていた。夕紀の最愛…

『5万4千円でアジア大横断』

アジア・ハイウェイという道があることを知らなかった。元々は国連の事業で、アジア32ヶ国を巡る現代版シルクロードのようなもの。その1号線の東の端は東京。この本は著者の下川裕治が、カメラマンの阿部稔哉、調理師の橋野元樹とともに、東京の日本橋からト…

夏の朝

朝、寝床の中にいて聴こえてくる音がある。車の走る音、冷蔵庫の出すブーンという音、雨の音。子供の頃には母親が朝食を作る音だった。家の玄関のツバメの巣にヒナが生まれると、ピーピーかわいらしい声が聴こえてきて、朝から楽しくなった。仕事柄、暗いう…

『ミュータント・メッセージ』

ハートにガツンとくる一冊。マルロ・モーガン女史によるこの本、受け止め方は千差万別だろう。いつもはネタバレにならない程度に本の内容を紹介するのだけれど、今回はパス。読まなきゃわからないタイプの本。 感想を書く前に、この本に対する自分の立場を明…

『フランシスコの2人の息子』

2005年のブラジル映画。1960年代のブラジルの片田舎。貧しい小作農のフランシスコは7人の子沢山。農作業のかたわら、ラジオで聴く音楽が唯一の楽しみ。ある日、フランシスコは収穫の殆どと引き替えにアコーディオンとギターを二人の息子に買い与える。兄弟は…

『投資ミサイル』

表紙の絵は豪華な椅子に腰掛け微笑むスーツ姿の女性。その後ろには赤色灯を光らせたロボット。サブタイトルに「今度こそ最期まで読める、あなたを成長させる投資ノウハウ」とある。恐らく小説仕立ての投資に関するビジネス書なのだろう。面白そうなので買っ…

先制ありがとう張り紙3

コンビニやファミレスのトイレで「当店のトイレをきれいにご利用いただき、誠にありがとうございます」というような張り紙をよく見かけるが、これを「先制ありがとう張り紙」と名づけ、そのことを以前このブログに書いた( 先制ありがとう張り紙、先制ありが…

「ケータイ」のこと

「ケータイ」という言葉が「携帯電話」を指すようになったのはいつからだろう。日常の中で自分も普通に「ケータイに電話下さい」とか言ってるけれど、考えてみるとおかしな呼び方だ。電気自動車を「電気」と略したら電気洗濯機や電気冷蔵庫の立場がないし、…

そうめん

梅雨が明けた。日本の四季に数えてもらえない5つめの季節、梅雨。そのエンディングはなぜか「明ける」と表現される。春も夏も秋も冬も「明ける」とは言わない。でも、ジメジメムシムシした曇り空と雨降りが続く日々から、真っ青な夏空とまぶしい太陽が見える…

『ミッション』

18世紀半ばの南米、現在のアルゼンチンとパラグアイとの国境付近のジャングル。そびえ立つ断崖絶壁を登ったその先にグァラニー族の村がある。イエズス会のガブリエル神父(ジェレミー・アイアンズ)は単身絶壁を登り、布教のため単身この村を訪れる。弓矢を…

夏の必需品

クール・ビズという言葉が定着し、日本でも夏場は上着なし、ネクタイなしのスタイルが普通になった。自分の勤め先でも6月から9月まで、オフィスではネクタイなしでOKだ。省エネ、エコの意味でも重要だろうが、高温多湿の日本の夏、単純にウレシイ。 しかし…

『木靴の樹』

19世紀末、イタリア北部のロンバルディア地方の小作農民の日常が描かれた『木靴の樹』を観た。エルマンノ・オルミ監督、1978年の作品。この映画の舞台は4軒の農家が暮す農場。種まき、収穫、とうもろこしの葉をとって、水車で粉にする。馬小屋では馬の出産が…

『毒草を食べてみた』

タイトルに惹かれた。毒草すなわち毒をもった植物を食べるというのだから尋常ではない。作者の植松黎は1948年生まれのエッセイスト。86年にカリフォルニア大に招かれた頃から毒草に親しんできたというから、キャリアは長い、筋金入りだ。豊富な経験と知識と…

『平城京に暮らす』

平城遷都1300年の古都奈良。かつて日本の中心であったこの地の地中から、様々な文字が書かれた木の板「木簡」が出土する。今までに大小合わせ17万点の木簡が確認されているそうだが、本書ではこの木簡から奈良の都に生きた人々の暮らしを読み解く。 木簡には…

『チャイナ・シンドローム』

1979年公開のアメリカ映画。タイトルの『チャイナ・シンドローム』とは、もしアメリカの原子力発電所で炉心の溶解が起こったら、高温になった核燃料が炉を溶かして流れ出し、地球を貫いて反対側の中国まで達するという意味。この映画が公開された数日後にス…

『日本辺境論』

日本や日本人について書かれた書物はとても多く、この本の中には新しい情報は一つも書かれていないと著者の内田樹は断りを入れている。丸山眞男、梅棹忠夫、山本七平らを下敷きにしながら「辺境」という地政学的な補助線を引くことで、理解を深めようとした…

『どこでもオフィス仕事術』

著者の中谷健一が実践している「ノマド(=遊牧民)ワーキング」すなわちオフィスのデスクに縛られず、オフィスの外で働く技術を紹介した本。インターネットに接続できるノートパソコンを中心とした仕事術だ。 商社の営業マンという仕事柄、出張は多い。新幹…

『ワイルドバンチ』

国家がまだ若く、良く言えば自由、悪く言えば信じられないくらい無法だった時代のアメリカ大陸。パイク(ウィリアム・ホールデン)は賞金首のおたずねね者。賞金総額4500ドルの強盗団ワイルドバンチのリーダーだ。そんなパイクを追いかける賞金稼ぎ達は強盗…

『ヘンリー五世』 

後に「100年戦争」と呼ばれるイングランドとフランスの戦いの最中、海を渡ったイングランド軍と、その数4倍のフランス軍とが聖クリスピアンの祭日に戦ったアジャンクールの戦い(1415年10月25日)前後の模様が描かれる。 主役のイングランド王ヘンリー五世は、…

『MASCARA』

ジャケ買いしてしまった・・・。高杉さと美という歌手を今まで知らなかったのだけど、2007年レコード大賞新人賞受賞、『MASCARA』は3枚目のアルバムだという。ほぼノン・ビブラートのマイルドで優しい歌声と時折聴かせるファルセットが魅力(もう少し低音が出せ…

『戦場のピアニスト』

第二次大戦中、ナチスドイツに占領されたポーランドでの実際にあった話。主人公のシュピルマン(エイドリアン・ブロディ)はユダヤ人ピアニスト。ラジオ局での演奏中に受けた爆撃を境に、彼の人生は変わった。財産没収、ゲットーへの強制移住、強制労働、そ…

プラネタリウム

プラネタリウムに行ってきた。朝から休日出勤して一人残務を処理した後に、ふと思い立ち行ってみたのだ。 ほの暗いドームの中、直径20メートルの半球型の空間は独特の雰囲気がある。椅子を思い切りリクライニングさせてクリーム色の天を仰ぐとワクワク感がつ…

『宗教で読む戦国時代』

いつの世も人心に不安は尽きない。経済が混迷を極め、世界各地でテロが頻発する現代もそうだが、今からおよそ500年前の戦国時代、謀反、裏切り、飢饉に一揆、明日をも知れぬ生活の中で人々の不安はさぞかし大きかったことだろう。著者の神田千里は日本中世史…

『チャイナタウン』

1930年代のロサンゼルスが舞台。私立探偵のジェイク(ジャック・ニコルソン)が、モーレイ夫人と名乗る女から夫の素行調査を依頼されるところからドラマは始まる。経験豊富なジェイクは難なくモーレイ氏の浮気現場を写真に収め、一軒落着と思われたのだが、…

『アラバマ物語』

オープニングの映像がとても美しく、思わず引き込まれた。子供の手が木箱のふたを開ける。宝箱なのだろう、中には古いコインやビー玉にクレヨン、木彫りの人形や止まった懐中時計が見える。子供の手がクレヨンを取り出し、ノートの紙に鳥の絵を描く。クレヨ…

『ヘンリー四世 第二部』

シェイクスピア第2四部作の3作目。物語は『ヘンリー四世 第一部』の最期、シュールーズベリーの戦いで国王軍が勝利した直後から始まる。残存する謀反勢力の掃討、王ヘンリー四世の最期、そしてヘンリー五世の即位までを描く。 第一部同様、第二部でもフォー…

『ヘンリー四世 第一部』

シェイクスピア第2四部作の2作目。『リチャード二世』でリチャード王に替わり王位についたヘンリー四世の治世、一部の重鎮(ウスター伯トマス・パーシー、ノーサンバランド伯ヘンリー・パーシー、その息子ホット・スパー等)が王に反旗を翻す。シュールーズ…

電子辞書とウォークマン

高校3年生の息子が電子辞書を買って欲しいという。電気屋の店頭の一角を占める、液晶画面と小さなキーボードのついたアレだ。何でもクラスで紙の辞書を使っているのは3人だけだというからすごい普及率だ。受験勉強の友に一丁買ってやるかと重い腰を上げた・・・…

『衆愚の時代』

「そりゃ違うだろう」と思ってもそう言うことのできない現代日本。著者の楡周平は1957年生まれの作家。「世間の糾弾を浴びることを覚悟で」率直な意見を書き綴ったという一冊。 本書の前半では派遣切りやひきこもり、就職難などを切り口にマスコミ、特にテレ…

『THE GAME』 (QUEEN)

1980年に発表されたQUEEN8枚目のオリジナルアルバム『THE GAME』。銀色のジャケットには革ジャン姿の4人が並ぶ。フレディーが髪を短くし、ヒゲをはやしたのはこの頃からで、「初めてシンセサイザーを使ったアルバム」と銘打ち、それまでのQUEENサウンドか…