畠山美由紀&ショーロクラブLIVE


 名古屋市の北に隣接する春日井市。ここ春日井にショーロクラブがやってきた。ショーロクラブ笹子重治(ギター)秋岡欧(バンドリン)沢田穣治(コントラバス)の3人によるユニットで、ブラジルの音楽「ショーロ」がその原点。2000年の夏、たまたまCDショップで手に取ったのが彼らの音楽との出会い。爽やかでポップで、少しセンチメンタルな彼らのサウンドに魅せられ、以来ずっと聴き続けてきたのだけれどライブは初めて。1週間前からワクワク、こんなことは久しぶりだ。会場の文化フォーラム春日井・視聴覚ホールは席数198の小さなホール。開場時間を少し過ぎて到着したら席は半分以上が埋まっていた。この日は全自由席、席を探してウロウロきょろきょろ・・・見つけたのは中央少し右寄りの最前列!!ちょうど一人分だけ空いていた、ラッキーだ。

 ショーロクラブの3人は静かに登場すると、おもむろに調弦を始める。ギターとバンドリンとコントラバス、合わせて弦は18本かぁ、たいへんだなぁ…などと考えていたら最初の曲が始まった。6/8拍子に漂う二連符が気持ち良い『Martelo Malfeito』で、あっという間に彼らの世界に引き込まれた。秋岡氏のバンドリンの子気味良さ、沢田氏のコントラバスの力強さ、そして笹子氏のギターの安定感。18本の弦の響きがホールの隅々まで満ちていき、その中に身を置きゆだねる至福の時…。冒頭7曲をショーロクラブの3人が演奏してくれた後、ヴォーカルの畠山美由紀氏がステージに登場。ワンピースの朱色にステージが華やぐ。一音一音を大切に歌う落ち着いたアルトはショーロクラブのアコースティックサウンドにしっくりなじむ。あぁ、この組み合わせはイイなと思った。

 畠山氏の持ち歌にスタンダード曲、ショーロクラブのメンバーによる作品などを交えて続くステージ、後半にはシャンソンの『それぞれのテーブル』という曲を披露。畠山氏がYouTubeちあきなおみが歌うこの歌を聴いて惚れ込んだのだそうだ。なるほど、良い曲だ。途中MCで畠山氏が語ってくれたのだが、ショーロクラブの3人は魂が溶けるような良い音を奏でながら、それとは裏腹に実につまらなそうな顔して演奏するという。思わず笑ってしまったが、本当にそうなのだ。明るいメロディも泣けるフレーズも超絶技巧もキメの一音も、殆ど表情が変わらない。体の動きも少なく、視覚に訴えるものが殆ど無い。3人とも静かに燃えるタイプなのだろう(笑)。

 畠山氏が出身地の宮城県気仙沼を思い作ったという『わが美しき故郷よ』でこの日のステージは終了。鳴り止まぬ拍手にアンコールは『Over the rainbow』。ブラジルテイストの効いた、オシャレでポップで、大人の雰囲気の漂う『虹の彼方に』だった。終演後、入り口ホールでサイン会。ショーロクラブのCDは殆ど持っているのだが、唯一買いそびれていた『武満徹ソングブック』があったので丁度良いと購入。行列に並び4人にサインをしてもらった(嬉)。素敵な音の余韻とサイン入りCD、それから近所の洋菓子屋さん「パティスリーメリメロ」から来場者全員へのお土産、チョコレートブラウニーを手に家路についた。