『戦場のピアニスト』


 第二次大戦中、ナチスドイツに占領されたポーランドでの実際にあった話。主人公のシュピルマンエイドリアン・ブロディ)はユダヤ人ピアニスト。ラジオ局での演奏中に受けた爆撃を境に、彼の人生は変わった。財産没収、ゲットーへの強制移住、強制労働、そして家族と離れて一人に・・・。ユダヤ人が感じたであろう不安と恐怖を、ロマン・ポランスキー監督が描いた。
 
 戦争の映画なのだが、不思議と静かな印象が残った。ピアノの調べと市街戦の爆音。天上の音楽と地獄の業火を思わせるコントラストの間に、永遠とも思える静けさがある。電気を消して、音をたてるな、見つかったら殺される。逃亡者の気持ちがリアルに感じられ、心は重くしずむ。映画の中では2時間半だが、実際は1939年のポーランド侵攻から5年以上の歳月がそこにはあったのだ。それはポーランド国内のユダヤ人の9割が殺されるのに、十分な時間だった。

 ナチスドイツがやってしまったた事は決して忘れてはならない、語り継がねばならないことの一つだ。二度と繰り返してはならないと心の底から思う。しかし、今を生きる我々がそう考えるのは、この戦争にドイツが破れたからという事もある。あまり考えたくないことだけれど、もしドイツが勝っていたら、この出来事について我々は全く違う感想を持っていたかもしれない。その証拠に、ヒロシマナガサキの叫びをよそに、世界には山ほどの核兵器がある。

戦場のピアニスト [DVD]

戦場のピアニスト [DVD]