2009-01-01から1年間の記事一覧

『スターバト・マーテル』3

タイトルの邦訳は『悲しみの聖母』。キリストの最期に直面した聖母マリアの悲しみを歌った詩は13世紀に書かれたもの。たくさんの作曲家がこの詩に曲をつけいるが、今回聴いたのはアントニオ・ヴィヴァルディのスターバト・マーテル。歌はマリーニコル・ルミュ…

『自転車泥棒』

第二次大戦後間もない1948年のイタリア映画。主人公のアントニオは妻と二人の子供がいるが仕事がない。職安で2年ぶりに得た仕事はポスター貼り。条件は自前の自転車があること。しかし貧しいアントニオは自分の自転車を質入していた。妻のマリアが結婚の時に…

『天使と悪魔』

2009年公開の映画『天使と悪魔』を観た。原作はダン・ブラウンの小説。大ヒットした映画『ダ・ヴィンチ・コード』に続く映画化だが、原作が書かれたのは『天使と悪魔』のほうが先。ヴァチカンを舞台に図像学者ロバート・ラングドンが活躍する。 ヴァチカンで…

2009年をふりかえる

2009年という年をサブプライムローン問題、リーマン・ショックの延長線上に位置づけてしまう。春までは本当にヤバイ雰囲気が充満していて、何が起こっても不思議じゃない気がした。政府の景気対策等の効果もあってか、夏以降何とか持ち直し最悪期は脱した・・・…

『日本人が知らない幸福』

『日本人が知らない幸福』 武永賢 著者の武永賢はベトナム生まれ。10歳のときサイゴン陥落で故国ベトナム共和国が消滅。13歳の時から合計7回海外への亡命を図るが全て失敗。17歳の時家族とともに合法難民として日本へ亡命し定住。杏林大学医学部卒業後、医師…

『レアメタル超入門』

『レアメタル超入門』 現代の山師が挑む魑魅魍魎の世界 中村繁夫 レアメタルという言葉を最近よく耳にする。この本の序章によると、市場に流通する金属の95%は鉄で、残り5%のうちで、銅、鉛、亜鉛など、年間100万トン以上の需要のある金属を除いたものをレア…

『カサブランカ』

第二次大戦中、仏領モロッコのカサブランカ、そこはドイツに占領されたフランス本国からアメリカへ逃げる中継地点として賑わっていた。この街で酒場を経営するリック(ハンフリー・ボガート)は、昔パリでイヴォンヌ(イングリッド・バーグマン)という女性…

『武装島田倉庫』

椎名誠1990年のSF小説。時は近未来、北政府との最終戦争が終わってから20年近くたった頃。戦争の影響はまだ色濃く、海面は油泥が層をなし、黒くヌラヌラと光っている。長さ15mもある凶暴なかみつき魚や人の目玉を突く鳥など不思議な生き物や植物がたくさん登…

『「ウェイ」のある強い経営』

『「ウェイ」のある強い経営』野口吉昭 企業の「ウェイ」とはその企業らしさ。現場の状況そのものであり、その企業らしい人や組織の動き方・動かし方を意味する。「人」「モノ」「カネ」そして「情報」が現代の経営資源と言われるが、「ウェイ」はこれらに続…

『恋の骨折り損』

『恋の骨折り損』ウィリアム・シェイクスピア このお話はナヴァールの王様と3人の側近が誓いを立てるところから始まる。その誓いとは学問の道を極めるため、3年間世俗の欲望を捨てるというもの。ご立派な心がけだが、この誓い、立てたはなから綻びを見せる…

『バージニア・ウルフなんかこわくない』

まるで言葉の格闘技(外乱闘有り)。全編を通して激しい舌戦が繰り広げられる会話劇。40年以上前、1966年のモノクロ作品だ。歴史学の助教授ジョージ(リチャード・バートン)とその妻マーサ(エリザベス・テイラー)がパーティーから帰宅するところからこの…

『親不孝長屋』

『親不孝長屋』池波正太郎、平岩弓枝、松本清張、山本周五郎、宮部みゆき サブタイトルに「人情時代小説傑作選」とある。5人の作家の人情話がそれぞれ1作ずつ、親子の心の触れあいやすれ違いが生き生きと描かれる。一流どころの競演なのだから面白くないはず…

『生物と無生物のあいだ』

『生物と無生物のあいだ』福岡伸一 子供のころから自然科学系の本が好きだった。このたび休刊を決めた学研の児童向け月刊誌「科学」と「学習」では「科学」の方が大好きな少年だった。とはいってもその後文系の人生を長く歩んだため、科学の恩恵にあずかるこ…

『スターバト・マーテル』2

ボッケリーニの『スターバト・マーテル』を聴いた。ソプラノのロベルタ・インヴェルニッツィ、弦楽はビスルマのラルキブデッリによる2002年の録音。 もの悲しい弦楽の響きに始まり、しっとりとしたソプラノが重なる第1曲から心を鷲掴みにされる。第2曲では揺…

『K−20 怪人二十面相・伝』

2008年暮れに公開された映画。遠藤平吉(金城武)はサーカスの人気軽業師。眼にもとまらぬ身のこなしで拍手喝采を浴びる。平吉はある日、謎の男(鹿賀丈史)の依頼で名探偵明智小五郎(仲村トオル)と財閥令嬢の羽柴葉子(松たか子)との結納の様子を盗撮す…

『STANDARDS on the sofa〜土岐麻子ジャズを歌う〜』

土岐麻子が2004年にリリースしたアルバム。実父のジャズサックス奏者、土岐英史をはじめとした強力なバック陣に支えられ、のびのびと軽やかに唄う。実は彼女の歌を聴くのはこれが初めて。アルバムタイトルに「ジャズを歌う」とあるが、ジャズ・ヴォーカルの…

『アトランティス・ミステリー』

『アトランティス・ミステリー』庄子大亮 今から1万2000年前、アトランティス大陸はジブラルタル海峡の西側の大西洋に浮かんでいた。豊かな資源と強力な軍事力をもち栄華を極めたが、奢り高ぶった結果ゼウスの怒りをかい一昼夜のうちに海に沈んで跡形もなく…

『銀天公社の偽月』

『銀天公社の偽月』椎名誠 絎針玄華(くけばりげんげ)、葬式蛭(とむらいびる)、捻転如雨露(ねんてんじょうろ)、滑騙(ぬめりだまし)、磯巻舌(がしがし)、・・・やたらと画数が多くて書くのが難しそうな名前が並ぶ。大きな戦争の後の未来社会、疲弊し荒…

『スターバト・マーテル』

タイトルの邦訳は『悲しみの聖母』。キリストの最期に直面した聖母マリアの悲しみを歌った詩は13世紀に書かれたもの。たくさんの作曲家がこの詩に曲をつけいる。今回聴いたのはジョバンニ・バティスタ・ペルゴレージの作品。演奏はクリストフ・ルセ指揮ル・…

『時計じかけのオレンジ』

近未来を描いたスタンリー・キューブリック監督作品、公開は1971年。大阪万博の翌年、あの頃の未来ね…。新しいのだけれど古い「昔の未来」はどこか懐かしい匂いがする。大阪万博が明るい未来なら、この映画は退廃した暗い未来。 主人公アレックスは学校にも…

『黄金狂時代』

チャップリンの『黄金狂時代』(The Gold Rush)を観た、「タイトルは知ってるけど観たことがない映画を観てみよう運動」の一環だ。ゴールドラッシュのアラスカ、一攫千金を夢見て幾千人もの男たちが集まる。一人峠を越えるチャーリー(チャールズ・チャップ…

坂の上の雲ミュージアム

仕事で松山に行った際に立ち寄った。このミュージアムは松山市内随一の繁華街の北側、松山城のふもとにある。大通りからほんの少し入っただけだが、お城の山を背景にシンと静まった一角にそびえる、鋭角を強調した現代的というか未来的デザインの建物だ。 言…

『元素生活』

『元素生活』寄藤文平 これまた面白い本だ。物質を構成する水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム・・・・昔化学の時間に習った「元素」は全部で111個あるという。名前と元素記号が書かれた「周期表」はカナリとっつき難かった。一部の金属を除いて具体的にその…

『タイタス・アンドロニカス』

シェイクスピアの悲劇、タイタス・アンドロニカスを読んだ。タイトルは武勇の誉れ高きローマの老将軍の名前だ。タイタス・アンドロニカスはゴート族との戦いに勝利し、ローマへ凱旋する。捕虜としてローマに連れてこられたゴート族の女王タモーラはローマ皇…

世界に誇る日本の技術!

私の寒さ対策・・・そりゃもう絶対にカイロでしょうカイロ(断言)!! 冬は苦手だ。子供の頃から暑さにはめっぽう強かったが、冬の寒さには弱かった。ポケットに手をつっこみ、背中を丸め「寒い寒い」が口癖になる。ストーブの前が定位置になり、そこから離れ…

『TIME×YEN時間術』

『TIMExYEN時間術』長野慶太 自分の時間を管理して有効に使うノウハウを教えてくれる時間術の本は少なくないが「死からの逆算の時間術」などと言われると「えっ何?」と思ってしまう。そういう本なのだ、この本は。 時間を有効に使いたい、無駄な時間を減ら…

『禁断のパンダ』

『禁断のパンダ』拓未司 「何だよそのタイトル?」というのが第一印象。薦めてくれた後輩によると、『美味しんぼ』のようなミステリー。とにかく料理の描写がスゴイのだという。文庫の帯には”グルメ・ミステリー”の文字。何じゃそりゃ?著者の拓未司は元フレ…

長島の朝日

三重県の長島温泉にいってきた。 海沿いに立つホテルの6階の部屋から見た朝日。日の出の少し前に目覚め、カーテンを開けると空がジワジワと明るくなっていった。日の出の瞬間、光る点が見る見る大きくなって太陽になっていった。前の晩遅くまで飲んでグダグ…

『世界怪魚釣行記』

『世界怪魚釣行記』武石憲貴 ナイル川、アマゾン川、パプアニューギニアにタイ、そしてモンゴル。ただひたすら怪魚を求めて世界の秘境に挑んだ釣りキチのディープすぎる記録。狙う獲物は幅2mオーバーの巨大エイ、古代魚ピラルクー、金色に輝くバラマンディ…

『99.9%は仮説』

『99.9%は仮説』竹内薫 面白いタイトルだと思った。科学の世界では仮説を立てそれを検証する。十分に検証され、皆に認められた仮説は通説と言われる。通説によって世界は説明され解釈されるので、我々一般人にとってそれは動かしがたく、絶対なものに思える…