夏の朝

 朝、寝床の中にいて聴こえてくる音がある。車の走る音、冷蔵庫の出すブーンという音、雨の音。子供の頃には母親が朝食を作る音だった。家の玄関のツバメの巣にヒナが生まれると、ピーピーかわいらしい声が聴こえてきて、朝から楽しくなった。仕事柄、暗いうちに起きる人は殆ど無音の中で寝床を抜け出すのだろう。

 8月夏真っ盛りの日曜日。目覚ましが鳴る前にセミの鳴き声で目が覚めた。アブラゼミクマゼミか、近所の木に何匹かとまっているようだ。短い地上での日々、寸暇を惜しむ気き持ちは分かるが、呆れるほどのパワー全開ぶりに圧倒されてしまう。まだ静かなのにウルサイ。子供の頃の夏休み、ラジオ体操に通った朝を思い出した。


 写真は9年前の夏、我が家の机の上で羽化したクマゼミ。夜中の11時過ぎに背中が割れ、後ろに反り返るように、少しずつ少しずつ。殆ど動きはないのだけれど、時折ピクピクッと動いたり、足をガサゴソしたりする。およそ1時間、日付が変った頃に完全に殻から抜け出した。カールして白っぽかった羽を時間を掛けてゆっくり伸ばすと緑がかった透明になった。白い体、金色の腹が輝いていた。翌朝には黒々としたクマゼミとなって、窓の外へ飛んでいった。

 寝床で朝聴くセミの声、夏バテでダウン気味の人には辛かろう。自分は夏生まれのためか、暑さにはめっぽう強い(寒さにはとびきり弱いが)。昨夜は少し早めに床についたため、セミに起こされても全く平気。おかげで予定より少し早く起きる事ができたから今日は一日が少し長い。得した気分だ。願わくば林間で聴く蝉時雨のような涼やかさがほんの少しでも感じられればウレシイと思うのだが、それは無いものねだり、セミに罪は無い。短い夏、思いっきり鳴け!!!