『フランシスコの2人の息子』


 2005年のブラジル映画。1960年代のブラジルの片田舎。貧しい小作農のフランシスコは7人の子沢山。農作業のかたわら、ラジオで聴く音楽が唯一の楽しみ。ある日、フランシスコは収穫の殆どと引き替えにアコーディオンとギターを二人の息子に買い与える。兄弟は父親に促され、歌と楽器を覚えていく。実力をつけた二人をプロモートしようという人物が現れ、幼い兄弟は演奏旅行に旅立つ。しかし彼らの前には思いがけない障害が待ち受けていた…。

 ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノという兄弟デュオを全く知らなかったが、彼の地では大変有名なスターなのだそうだ。この映画は彼らの半生をつづった実話。ブラジル版『狩人!成功の軌跡』とでも言える映画なのだけれど、単なるスターの成功物語に終わっていない。父親フランシスコを物語の中心に据え、家族の物語りとして描いているからだろう。貧困、横暴、無鉄砲、人間不信、挫折…。「努力+根性=成功」というような単純な図式ではないところも、大人のドラマになっていた。

 可愛らしい子役、胡散臭いプロモーター、一心なフランシスコ。どの登場人物も魅力的だが、一番ステキだったのはフランシスコの妻エレナ。素朴で優しい彼女の笑顔は貧しさの中でも輝いて見えた。夢を追う若者にとって、こんな母さんの応援は何よりの原動力になるんだろうなぁ。

フランシスコの2人の息子 [DVD]

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