懸空寺

 10月の連休、山西省の最北部、内蒙古に接する大同市に行ってきた。市民の1/3が石炭関連という石炭の街だが、北魏の時代は都として栄えた歴史ある町だ。その大同市の郊外にある悬空寺というお寺に行ってきた。市の中心部から車で1時間、このあたりは砂漠性の気候なためか、岩山の所々に低い木がポツポツ生えた景色が珍しい。あいにくの曇天のため荒涼とした雰囲気が際立つ。

 

 両側を切り立った岩山の崖に挟まれた川沿いにある駐車場で車を降りて数分歩く。山門のようなものは無く、あまり多くない土産物屋の間を抜けた先、川をはさんだ反対側右手前方の崖に悬空寺が見える。岩肌と一体化した悬空寺は、周りの自然が雄大すぎて、小さく見える。

 

 橋を渡り階段を上がる。岩肌のすぐ脇、黒い石の門の赤く塗られた小さな扉が入り口。2人がギリギリすれ違えるサイズだ。梯子のような狭くて急な階段を昇り、細い通路を通って全部で40ある小さな部屋を巡る。通路は全て建物の外側にあり、古い旅館の縁側のよう。この日は観光客が少なめで、中国人ばかりだったけれど、大柄で太った欧米からの団体客はさぞかし苦労することだろうなと心配になる。このお寺は道教儒教と仏教のお寺。そんな事アリなんだと驚いたが、向かって右側最上階の部屋が三教殿と呼ばれ、老子孔子・釈迦の像が並び祀られていた。スゴイ眺めだ。

 

 悬空寺が建てられたのは5世紀末。下に石垣が無い部分はどうしたのかというと、垂直に切り立った崖に四角い深い穴をいくつも掘って、そこに木の棒を差し込む。その棒の上に板を渡して床を作り、壁や屋根を作っていったのだそうだ。川底からは高く増水で流されることはなく、山間にあるので紫外線の影響も少ない。乾燥した気候も幸いし、現代に残った。修繕修復もしているだろうけれど、1500年前の技術に驚く。

 

 大同では云冈石窟、雁门关、大同土林などの名所を巡る予定だったが、新型コロナの影響で何とこの日から封鎖。旅程の変更を余儀なくされてしまった。いつかまた来てリベンジすると心に誓った。