『カサブランカ』
第二次大戦中、仏領モロッコのカサブランカ、そこはドイツに占領されたフランス本国からアメリカへ逃げる中継地点として賑わっていた。この街で酒場を経営するリック(ハンフリー・ボガート)は、昔パリでイヴォンヌ(イングリッド・バーグマン)という女性と生き別れになった過去を持つ。ある日リックの店にそのイヴォンヌが現れ二人は再会する。彼女はドイツに対抗する地下運動の大物、ヴィクター・ラズロの妻だった。カサブランカからアメリカへ旅立ちたいラズロ夫妻はリックの所有する通行証を必要としている。女嫌いで通していたリックに熱い想いがよみがえる・・・。
主演のハンフリー・ボガート(ボギー)の名前は知っていたけれど、映画を観たのはこれが初めて。「ゆうべどこに?」「そんな昔のこと覚えてないね」「今夜会える?」「そんな先のことは分からない」このセリフは知っていた。「君の瞳に乾杯」もそうだ。絵に描いたようなキザなセリフが板についている。ボギー=キザ=カッコイイ、この図式が完璧に成り立っている。そしてこの映画ではボギー(=リック)のダンディズムは決してキザなセリフだけじゃなかった。
この作品が公開されたのは1942年。1942年といえば第二次大戦下。そう、この映画は当時リアルタイムの現代劇だったのだ。男女の愛を描いており、決して戦争映画ではないのだが「ドイツ=悪、アメリカ=善」という構図がベースになっていて、戦時中のプロパガンダの側面もあったのだろう。アメリカではこんな映画を作りボギーの魅力にシビレさせながら、「ドイツってヒドイわね」と思わせていたのだ。かたや日本では「鬼畜米英」「欲しがりません勝つまでは!」「贅沢は敵だ!」うーん、悔しいが余裕を感じてしまうなぁ。
話を『カサブランカ』に戻そう。当時はボギーのようなダンディズムが男たちに求められていて、男達も「かくありたし」と考え、ボギーを気取ってタバコに火をつけたのだろう、わかる気がする。時代は下って、37年後の1979年、沢田研二のヒット曲『カサブランカ・ダンディ』が記憶に残っている。「ボギーボギーあんたの時代はよかった、男がピカピカのキザでいられた…」阿久悠がこの歌詞を書いた時すでにキザなダンディズムが忘れさられようとしていたのかも知れない。そこからさらに30年、現代の若者の目に『カサブランカ』のボギーはどう映るのだろう?
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