『スターバト・マーテル』2


 ボッケリーニの『スターバト・マーテル』を聴いた。ソプラノのロベルタ・インヴェルニッツィ、弦楽はビスルマのラルキブデッリによる2002年の録音。

 もの悲しい弦楽の響きに始まり、しっとりとしたソプラノが重なる第1曲から心を鷲掴みにされる。第2曲では揺れ動くマリアの気持ちを象徴するかのように短調長調、メジャーコードマイナーコードが移り変わる。迫り来る最期に心乱れる第3曲、オペラのレチタティーボのような第4曲の後には驚く程穏やかでチャーミングな第5曲が続く。

 この曲が書かれたのは1781年。先日聞いたペルゴレージのスターバト・マーテルから45年後、38歳のボッケリーニによる作品だ。ボッケリーニは弦楽のために膨大な数の室内楽曲を作曲した。有名なメヌエット(作品11の5、第3楽章)はヴァイオリン2+ヴィオラ+チェロ2の弦楽五重奏曲。この五重奏にソプラノを加えたのがスターバト・マーテルの編成なのだが、ソプラノパートを弦楽器で演奏したらそのまま弦楽6重奏になりそうだ。各パートが絡み合う様子はまさにボッケリーニお得意の弦楽による室内楽を思わせる。

 磔刑に処される我が子イエスを嘆く聖母マリアの心情を綴る全11曲。キリスト教徒ではないしラテン語の歌詞も理解できないが、次から次へと紡ぎ出される宝石のように美しく輝く旋律に心満たされた。ヴィヴァルディやハイドンのスターバト・マーテルも聴いてみたくなった。

ボッケリーニ:スターバト・マーテル
アーティスト: ラルキブデッリ, インヴェルニッツィ(ロベルタ), ボッケリーニ
出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
発売日: 2003/09/18
メディア: CD