『スターバト・マーテル』


 タイトルの邦訳は『悲しみの聖母』。キリストの最期に直面した聖母マリアの悲しみを歌った詩は13世紀に書かれたもの。たくさんの作曲家がこの詩に曲をつけいる。今回聴いたのはジョバンニ・バティスタペルゴレージの作品。演奏はクリストフ・ルセ指揮ル・タラン・リリーク、1999年の録音だ。歌が2声部と弦楽が3声部そして通奏低音という構成のこの曲、ソプラノはバーバラ・ボニーカウンターテナーアンドレアス・ショル

 ものすごく有名な曲なのだが、真面目に聴いたのは今回が初めて。第一曲から鳥肌が立った。ピリオド楽器の悲しげな音色が物憂げに響き、厳かに切々と歌うソプラノと、シットリしたカウンターテナーのからみには深い悲しみを通り越して恍惚感さえ漂う。

 驚くのは第4曲。聖母マリアがイエスの苦しむ姿を目にする、という歌詞なのだが、4分の2拍子、ミディアムテンポの変ホ長調。曲だけ聴けばハッキリ言ってむちゃくちゃチャーミング。聖母の悲しみを表現するためにあえて逆張りなのか、全体構成から考えてこのあたりで長調の曲も入れなくちゃ…って事なのか。ペルゴレージの真意は分からないけれど、個人的にはど真ん中の好みのタイプなのだ。

 冒頭にも書いたように、多くの作曲家の『スターバト・マーテル』がある。ボッケリーニやヴィヴァルディ、ハイドンも作曲しているようだから聴いてみたい。

ペルゴレージ:スターバト・マーテル
アーティスト: ルセ(クリストフ),レ・タラン・リリクショル,ショル(アンドレアス), ボニー(バーバラ)
出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
発売日: 2008/09/17
メディア: CD