『黄金狂時代』


 チャップリンの『黄金狂時代』(The Gold Rush)を観た、「タイトルは知ってるけど観たことがない映画を観てみよう運動」の一環だ。ゴールドラッシュのアラスカ、一攫千金を夢見て幾千人もの男たちが集まる。一人峠を越えるチャーリー(チャールズ・チャップリン)もそんな男たちの一人。彼が極寒の地で出会ったのは、指名手配犯と美女と熊・・・・!?

 ゴールドラッシュは1848年カリフォルニアを皮切りに、19世紀後半のアメリカを舞台に多くの男たちが一攫千金を狙った一大ムーブメントだ。この映画が作られた1925年の時点ではすでに四半世紀以上昔の出来事だっただのだが、実際にその栄光と挫折とを体験した世代もまだ生きていただろうから、身近な「生の歴史」だったのだろう。広い国土のどこかにツルハシを着きたて、金鉱を掘り当てれば自分のものとなり一攫千金。現代の日本では考えられないが、先住民のインディアンを武力で追い払って自分たちの国をつくっちゃったという歴史と比べれば、このくらいアリなのかも知れない。ちなみにジョン・万次郎はゴールドラッシュのカリフォルニアで帰国の資金を稼いだそうだ。

 本作には有名な靴を煮て食べるシーンや、小さなパンを刺したフォーク2本を脚に見立ててテーブルの上でダンスを踊るシーン、崖っぷちで傾いた家から脱出するシーンなど、印象的なシーンがたくさん出てくる。チャップリンパフォーマーとして才能が遺憾なく発揮されている。ハイビジョン映像に慣らされた現代人にモノクロの粗い画面は辛いが、チャップリンのコミカルな演技は時代を超えて人を笑わせる。笑いあり、恋あり、冒険ありの心温まる作品。

黄金狂時代 [DVD]

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