読書

『欲しがらない若者たち』

『欲しがらない若者たち』山岡拓 若者の自動車離れが指摘されて久しい。クルマはかつてのように若者の憧れの的にはなり得ないのだ。クルマだけではない。ブランド衣類も高級時計も欲しくない。お酒も飲まなければ海外旅行もしない。本書は日経産業地域研究所…

『日本人が知らない幸福』

『日本人が知らない幸福』 武永賢 著者の武永賢はベトナム生まれ。10歳のときサイゴン陥落で故国ベトナム共和国が消滅。13歳の時から合計7回海外への亡命を図るが全て失敗。17歳の時家族とともに合法難民として日本へ亡命し定住。杏林大学医学部卒業後、医師…

『レアメタル超入門』

『レアメタル超入門』 現代の山師が挑む魑魅魍魎の世界 中村繁夫 レアメタルという言葉を最近よく耳にする。この本の序章によると、市場に流通する金属の95%は鉄で、残り5%のうちで、銅、鉛、亜鉛など、年間100万トン以上の需要のある金属を除いたものをレア…

『武装島田倉庫』

椎名誠1990年のSF小説。時は近未来、北政府との最終戦争が終わってから20年近くたった頃。戦争の影響はまだ色濃く、海面は油泥が層をなし、黒くヌラヌラと光っている。長さ15mもある凶暴なかみつき魚や人の目玉を突く鳥など不思議な生き物や植物がたくさん登…

『「ウェイ」のある強い経営』

『「ウェイ」のある強い経営』野口吉昭 企業の「ウェイ」とはその企業らしさ。現場の状況そのものであり、その企業らしい人や組織の動き方・動かし方を意味する。「人」「モノ」「カネ」そして「情報」が現代の経営資源と言われるが、「ウェイ」はこれらに続…

『恋の骨折り損』

『恋の骨折り損』ウィリアム・シェイクスピア このお話はナヴァールの王様と3人の側近が誓いを立てるところから始まる。その誓いとは学問の道を極めるため、3年間世俗の欲望を捨てるというもの。ご立派な心がけだが、この誓い、立てたはなから綻びを見せる…

『親不孝長屋』

『親不孝長屋』池波正太郎、平岩弓枝、松本清張、山本周五郎、宮部みゆき サブタイトルに「人情時代小説傑作選」とある。5人の作家の人情話がそれぞれ1作ずつ、親子の心の触れあいやすれ違いが生き生きと描かれる。一流どころの競演なのだから面白くないはず…

『生物と無生物のあいだ』

『生物と無生物のあいだ』福岡伸一 子供のころから自然科学系の本が好きだった。このたび休刊を決めた学研の児童向け月刊誌「科学」と「学習」では「科学」の方が大好きな少年だった。とはいってもその後文系の人生を長く歩んだため、科学の恩恵にあずかるこ…

『アトランティス・ミステリー』

『アトランティス・ミステリー』庄子大亮 今から1万2000年前、アトランティス大陸はジブラルタル海峡の西側の大西洋に浮かんでいた。豊かな資源と強力な軍事力をもち栄華を極めたが、奢り高ぶった結果ゼウスの怒りをかい一昼夜のうちに海に沈んで跡形もなく…

『銀天公社の偽月』

『銀天公社の偽月』椎名誠 絎針玄華(くけばりげんげ)、葬式蛭(とむらいびる)、捻転如雨露(ねんてんじょうろ)、滑騙(ぬめりだまし)、磯巻舌(がしがし)、・・・やたらと画数が多くて書くのが難しそうな名前が並ぶ。大きな戦争の後の未来社会、疲弊し荒…

『元素生活』

『元素生活』寄藤文平 これまた面白い本だ。物質を構成する水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム・・・・昔化学の時間に習った「元素」は全部で111個あるという。名前と元素記号が書かれた「周期表」はカナリとっつき難かった。一部の金属を除いて具体的にその…

『タイタス・アンドロニカス』

シェイクスピアの悲劇、タイタス・アンドロニカスを読んだ。タイトルは武勇の誉れ高きローマの老将軍の名前だ。タイタス・アンドロニカスはゴート族との戦いに勝利し、ローマへ凱旋する。捕虜としてローマに連れてこられたゴート族の女王タモーラはローマ皇…

『TIME×YEN時間術』

『TIMExYEN時間術』長野慶太 自分の時間を管理して有効に使うノウハウを教えてくれる時間術の本は少なくないが「死からの逆算の時間術」などと言われると「えっ何?」と思ってしまう。そういう本なのだ、この本は。 時間を有効に使いたい、無駄な時間を減ら…

『禁断のパンダ』

『禁断のパンダ』拓未司 「何だよそのタイトル?」というのが第一印象。薦めてくれた後輩によると、『美味しんぼ』のようなミステリー。とにかく料理の描写がスゴイのだという。文庫の帯には”グルメ・ミステリー”の文字。何じゃそりゃ?著者の拓未司は元フレ…

『世界怪魚釣行記』

『世界怪魚釣行記』武石憲貴 ナイル川、アマゾン川、パプアニューギニアにタイ、そしてモンゴル。ただひたすら怪魚を求めて世界の秘境に挑んだ釣りキチのディープすぎる記録。狙う獲物は幅2mオーバーの巨大エイ、古代魚ピラルクー、金色に輝くバラマンディ…

『99.9%は仮説』

『99.9%は仮説』竹内薫 面白いタイトルだと思った。科学の世界では仮説を立てそれを検証する。十分に検証され、皆に認められた仮説は通説と言われる。通説によって世界は説明され解釈されるので、我々一般人にとってそれは動かしがたく、絶対なものに思える…

『美しいこと』

『美しいこと』赤木明登 石川県輪島の塗師(ぬし)赤木明登が彼同様、自分の手で何かを作ることを生業としている友人たちを訪ねるエッセイ『美しいもの』の続編だ。この本では14組19人の友人が紹介されている。前作同様魅力的な人たちばかりだ。 木工職人、…

『「十五少年漂流記」への旅』

『「十五少年漂流記」への旅』椎名誠 文学であれ音楽であれ、作者と鑑賞者との間には必ず大きな溝がある。全く同じ価値観や趣味嗜好、考え方を持つ人間が決していない以上、これは当然のことだ。この溝を少しでも埋めようと、人類は昔から涙ぐましい努力をし…

『赤い指』

『赤い指』東野圭吾 ひどい話だ。子を持つ親の一人として心をゆさぶられた。一日の勤務が終わる頃、前原昭雄は妻から電話で「早く帰ってきてほしい」と言われる。帰宅してみると中学生の息子が殺した女の子の死体が庭にあった。自室に閉じこもる息子、何とか…

『ナヴァロンの要塞』

『ナヴァロンの要塞』アリステア・マクリーン ナヴァロンというのはエーゲ海に浮かぶ島の名前だ。時は第二次世界大戦中、ナヴァロン島にはドイツ軍の要塞があった。ナヴァロンの北にあるケロス島には孤軍奮闘する1200人のイギリス将兵が助けを待っているのだ…

『虚人のすすめ』

「100%絶賛」という本にめぐり合うことはほとんどない。「大方OKなんだけど、この章だけは納得できない」「半分読み飛ばしたけど、50%位はためになったナ」こんな本が多いのが現実。『虚人のすすめ』はページ数でいったら「7割NG、2割まぁまぁ、でも1割最高…

『稼げる人、稼げない人』

どんな会社も収益を得ることで存在している。しかし会社に勤める人の全員が収益を得ることに直接かかわっているわけではない。営業に携わる人は自分の行動がどのくらいの収益につながるかを具体的な数字として実感できるが、それ以外の業務をやっていると実…

『シェイクスピアのたくらみ』

著者の喜志哲雄は京大の名誉教授。英文学と演劇学の専門家、シェイクスピア劇のオーソリティーだ。シェイクスピアは言わずと知れた天才劇作家。その作品を見る観客はシェイクスピアが繰り出す虚構の世界に浸り、魅了され、幸福なひと時を味わう。いくらかの…

『ヴェローナの二紳士』

イタリア北部の街ヴェローナ生まれの若い紳士、ヴァレンタインとプローテュースの二人は幼なじみの親友だ。ヴァレンタインは見聞を広めるため、ミラノ大公の宮廷へ旅立とうとしている。一方のプローテュースはジュリアという娘に恋をしていてメロメロ状態。…

『さまよう刃』

会社員の長峰重樹は高校生になったばかりの娘を殺された。5年前に妻を亡くし、愛する娘も失った。打ちひしがれ、絶望の淵にいる長峰のもとに、未だ捕まっていない犯人の所在を告げる電話がかかる。半信半疑ながらも告げられた住所を訪ねた長峰は衝撃の事実を…

『春の城』

以前、書店で偶然見つけ読んでみた『大人の見識』という本で阿川弘之という作家を知った。穏やかで優しい言葉に人生の後輩への思いが込められている。タイトルそのものではないが「見識ある大人」の姿を見た。そんな阿川弘之が自らの戦争体験をつづった小説…

『秘密のミャンマー』

インドシナ半島の西側の付け根、西はインドとバングラディシュ、北は中国、東はタイ、ラオスと国境を接する国ミャンマー。軍事政権に軟禁されているアウンサンスーチー女史がらみで時折ニュースになる以外、この国の名が話題に上る事はきわめて少ない。そん…

『プロの残業術。』

私的残業。この何とも不思議なコトバが本書のキーワードだ。著者によると、自ら楽しんでする「自分のための残業」が「私的残業」の定義だ。同僚達がみな帰り、外部からの電話もかかってこない。残業タイムは自分のペースで仕事ができる、ゴールデンタイムな…

『間違いの喜劇』

瓜二つの二人、他人はもちろん、親族や配偶者でさえ見分けるのに苦労するくらい何から何までソックリの双子がいたら、そりゃぁヤヤコシイだろう。まして二組4人の双子がいたとしたら大混乱だ。シェイクスピアの『間違いの喜劇』を読んだ。タイトルにある「間…

『十五少年漂流記』

1899年、ハワイ北のパール・アンド・ハーミーズ環礁で難破した龍睡丸の乗組員達がたどりついた無人島での記録、須川邦彦による『無人島に生きる十六人』という本を以前読んだ。危機的状況の中、明るく生き抜いた明治の男達の実話なのだが、椎名誠がこの本の…