スーパーリコーダーカルテット


 大阪住之江区の下町、昔ながらの風情を残す安立(あんりゅう)商店街。その片隅にアンリュウリコーダーギャラリーというリコーダー専門店がある。このお店にはタケヤマホールという小さなホールがあって、ここでスーパーリコーダーカルテットのコンサートを聴いてきた。午後一時からのステージ、客席はほぼ満席で女性客が多い

スーパーリコーダーカルテットとは、リコーダー、トラヴェルソ奏者の藤田隆氏が北村正彦、秋山滋、松浦孝成の各氏とともに2004年に結成したカルテット。ルネサンス期のリコーダー曲から現代曲までレパートリーは幅広く、毎年各地でリサイタルを行う傍らCDも二枚発表している。演奏を聴くのは初めてなので、ワクワク感が高まる。この日のプログラムは協奏曲イ短調(G.Ph.テレマン)、ハヴァ・ナギラ(イスラエル古謡)、ブリキの兵隊の行進(L.イエッセル)他6曲。ソプラノから長さ2mもあるコントラバスまで色々なサイズのリコーダーを曲毎に持ち替えての演奏。曲の合間にはメンバーの楽しいトークも加わり、会場全体がアットホームな雰囲気に包まれていた。この日はメンバーの北村氏が病欠のため、渡辺清美氏が代役で演奏したが、息もピッタリで全くあぶなげない。さすがプロの奏者だ。

 リコーダーの歴史は古い。世界各地でそれこそ先史時代から同じような楽器は作られいて、ヨーロッパでも中世、ルネッサンス期を通じてとても人気の高い楽器だった。「フルート」というと、現在では横笛のフルートを指すけれど、当時この言葉はリコーダーを表し、まだメジャーでなかった横笛のフルートはわざわざ「横の」という形容詞をつけて、フラウト・トラヴェルソ(伊)などと呼ばれていたのだ。リコーダーが最も隆盛を極めたのはバロックの時代で、バッハやテレマン、ヴィヴァルディなど、多くの作曲家がこの楽器のために曲をたくさん作った。しかし18世紀の後半にその座をトラヴェルソに譲ると、全く省みられなくなってしまった、残念なことだ。

 リコーダーの繊細な音色を楽しむのにもってこいの小さなホール。アンコールを含め1時間半ほど、至福の時を過ごさせていただいた。アンコールの最後は「おしえて」、アルプスの少女ハイジのテーマソングだ。スーパーリコーダーカルテットのコンサートではいつもトリを飾る、締めの一曲らしい。リコーダーの明るい音色が楽しいメロディーにピッタリで、曲に合わせて体を動かす人多数。皆が幸せな気持ちになって帰路につく、そんなコンサートだった。ぜひまた聴きに行きたい。