『心に響く「話し方」』


 ドキッとするタイトルだ。仕事で、プライベートで、毎日のように誰かと話をするのだが、自分の言葉のどれだけが相手の心に響いているのだろう・・・。著者の青木仁志はブリタニカでトップセールスマンとして活躍した後独立し、人材教育のコンサルタント会社を設立。これまでに27万人の人々に研修を行ったという。自らを「プロスピーカー」と呼ぶ、ビジネストークオーソリティーだ。

 この本には「相手の目を見て話す」「万人うけする名言やたとえ話をスパイスにする」「特質ではなく、利点を説く」というようなノウハウも数多く書かれていて、それはそれで大いに参考になるのだが、それ以上に大切なものとして「相手の事を思いやる心」が上げられている。最後は話し手の心の問題、口先だけのアレコレではない、やはり心の部分が一番大切なのだ。そこまで踏み込んだ点で、この本は単なるノウハウ集ではない。著者の経験と実績に裏打ちされた、凄みのある一冊に仕上がっている。

 会話における心の持ち方で気をつけていることが一つある。営業という仕事柄、電話でのやり取りは日常的なのだけれど、忙しくてバタバタしている時に限ってお客さんからややこし〜い電話が入る。「あー、何でこんな時に!!」と思うのだが、こちらがバタついていることなど、先方は知るはずもない。ここで大切なのは心のスイッチを切替えること。口のスイッチを切り替えて無理やり丁寧な対応をするのではなく、心のスイッチを切り替えれば自然と対応は丁寧になる。日々気をつけているのだが、果たしてどれだけできているのだろうか。

 時には相手に歓迎されない話をしなければならない事もある。個人的には不本意であっても、避けては通れない。聞く方も辛いが話す方はもっと辛い。そんな時、事を進める唯一の方法が相手の心に響かせることなのだろうなと思う。小手先のテクニックでは何ともならないところでの心と心の真剣勝負。「頭で話せば頭に入る、心で話せば心に入る」この本の中で最も印象深い言葉だ。大切にしたい。

27万人を研修したトップトレーナーの心に響く「話し方」
作者: 青木仁志
出版社/メーカー: アチーブメント出版
発売日: 2011/10/04
メディア: 単行本(ソフトカバー)