『J.S.Bach:Orchestral Works & Concertos』


 シギスバルト・クイケン率いるラ・プティット・バンドによるバッハ。ブランデンブルク協奏曲管弦楽組曲、バイオリン協奏曲(1,2)2本のヴァイオリンの為の協奏曲、そして音楽の奉げ物が全部入っている。CD5枚組、バッハの有名どころが満載だ。

 自分の中においてJ.S.バッハは独特の位置を占めている。同世代の作曲家で比べると、メロディーメーカーとしてはG.Ph.テレマンの方が好みだし、上品さとドラマティックさのバランスの良さではJ.Ph.ラモーが一押し。そして、バッハ家の中では次男のC.Ph.E.バッハの音楽に心酔しきっている・・・。それでも時折無性に聴きたくなるのがJ.S.バッハの音楽だ。何といっても対位法のキレが並外れている。寄せては返す音の粒、幾重にも重なり合う旋律のうねりに身をまかせるうちに、頭の中はだんだんカラッポになっていく。楽章ごとに色があり、次から次へと違う世界へ誘われていく。一曲が終わってしばらくは恍惚状態。余韻の中でふと我に帰る。そんな感覚を求めてしまうのだろう。

 シギスバルト・クイケンらしい、奇をてらうことのない端整で生き生きとした演奏は何度聴いても飽きが来ない。1981年から94年にかけての録音なので少々古い演奏だが、CD5枚がHMVの特価1,890円で買えてしまった。1枚400円以下、信じられない程お得。CDの販売が低迷しているというから、業界も必死なのだろう。それぞれ独立した商品として販売した過去の録音を一つにまとめ、セットにしてお得な価格で売るという商売は昔からあったのだろうか?学生の頃、当時1枚2500円位していたLPを大切に聴いた世代としては、ありがたいようなもったいないような、複雑な心境だ。