我が愛車


 すべってころんで在宅勤務…と、近況をつづってきたが、実は先週末から入院している。木曜に受けた診察で、ギプスの中の左足の経過が思わしくないため、ここは思い切って手術しましょう、となったのだ。金曜の午前中に入院し、午後に手術。腰椎への注射で腰から下の半身麻酔。2時間のオペは無事終了し、折れた我が左腓骨は2本のピンとワイヤーで見事に接合された。その晩こそ眠れない程の痛さだったが、日ごとに痛みは引いていった。狭い病室のベッドの上で金、土、日と過ごし、晴れて月曜日、点滴の針を抜き、車いすに乗って院内を動き回る許可をもらえた。というわけで、写真は現在の我が愛車だ。

 車椅子は初めての体験。左右にある大きなタイヤの横についた丸いハンドルのようなものを手で回して動かすのだが、想像していたよりずっと楽だ。ほんの少しの力でスーっと動き、実に気持ちが良い。動く度合も、ちょうど制御可能な範囲のスピードで、怖さを感じることは全くない。左右への方向転換、前進バックもスイスイと小気味良い。最初はおっかなびっくりだったけれど、すぐにコツがつかめた。今は脱臼した左腕が固定されているので、回すのは右手だけ。右足で地面を蹴って推進力アップ&方向調節をしている。左手も使えるようになったら怖いものナシだ。

 今まで考えた事も無かったけれど、車椅子には実はすごい技術が結集されているのではなかろうか。一見地味な製品だが、これまで数限りない程の改良、モデルチェンジやマイナーチェンジを繰り返しているから、この快適な乗り心地や操作性があるのだろう。自分のような一時使用ではなく、それこそ一生足代わりとして使う人もいるのだから、メーカーも真剣だろう。すばらしいテクノロジー、ありがたい事だと絶賛したくなった。

 たった三日、部屋から出られなかっただけなのに、車椅子は動き回れることのありがたさ、嬉しさを教えてくれた。また同時に、自分の場合は平たんな病院の屋内のみだから簡単だけれど、凹凸や段差の大きい一般の道を車椅子で動くのは、危険で大変なのだろうと想像が及ぶようにもなった。街中で車椅子に乗った人と出合うことがあるが、万一転倒した時の処し方を含め、高い運転技術と体力、度胸を兼ね備えているのだろう、すごい事だ。我が愛車との付き合いもおそらくあと数日、貴重な体験が教えてくれたこの気持ちを忘れたくないので、ここに記すことにした。

 で、今週のお題だが、「臨時収入が10万円!何をする?」そりゃぁ派手に快気祝いをしたいなぁ、皆に迷惑かけてるし。そして、年間休肝日0日、多い年でも3日以内という自分が、骨折してから何と2週間もお酒を飲んでいないことに今気が付いた。これは大変だ!!

在宅勤務

 骨折&脱臼をしてから8日経った。左足はギプスで固められ、左腕は三角巾で吊られバンドで体に固定されている。じっとしていれば痛みもなく、普段と何ら違いのない状態だ。「じゃぁ仕事できるなぁ」「えぇ、できますよ」上司との電話のやり取り。怪我をしたその日のうちに、パソコンと最低限の資料とを自宅に取り寄せた。

 そんなわけで、不意に訪れた在宅勤務。土日をはさんで6日が経過した。朝食後の食卓に陣取りノートパソコンとシステム手帳を広げることで一日が始まる。感覚的には出張先のホテルや喫茶店で仕事をしているのと何ら変わらない。ちょっとまわりが雑然としているだけだ(笑)。携帯電話とメールのみでのやり取りだが、特に支障はない。価格や納期の調整、品質仕様決め、書類作り…。中には込み入った案件もあるので、会って話ができないのはやはりもどかしい。携帯で部下にアレコレ依頼し、ついでに相談を受ける。見積書を作成しメールで送信すると別の問いあわせメールが届いている。そんなこんなであっという間に一日が過ぎていく。終日居間のテーブルを占拠してワーワーやっているので、妻にしてみればイイ迷惑だろう(笑)。

 商社の営業なので、事務所にいないことは多い。自分が新人だった二十数年前は、出張が2-3日続くと、溜まった事務仕事や留守中にかかってきた電話への対応で、帰ってからがものすごく大変だった記憶があるが、今は携帯電話とノートPCさえあれば、どこにいても仕事ができてしまう。移動の時間中に事務仕事を片付け、メールを使って社内外への連絡や指示をするのも普通の事だ。『どこでもオフィス仕事術』という本を読んでから3年近く経ったが、今でも普通に「ノマド(=遊牧民)ワーキング」をしている。

 そもそも営業は外にでてナンボの商売。出張続きで事務所の席にいなくても、ある程度は仕事が回っていくよう、しくみ作りをやってきたが、それがこんな形で活きるとは思ってもみなかった。そんなこんなで、自分の仕事は問題ないとして、自分が骨を折って不在なのを良い事に、部下がこっそり骨休めをしていないか少々気になってきた。そろそろツッコミを入れてやらねば!

すべってころんで


 火曜日の晩、雨が降り出した。夜の会議とその後の打ち合わせとを終えて、終電に跳び乗る。午前0時過ぎに最寄り駅までたどり着くと、雨は雪に変わっていた。水気の多いシャーベット状の雪だった。翌水曜日の早朝、暗い中をいつものように家を出ると、雪はすでに止んでいたが、道はあちこちで凍結している。慎重に慎重に足を進めた。駅近くのコンビニに立ち寄り、新聞を購入。通りを渡ろうと右を見て左を見て・・・・・足元への注意を怠った。不用意に踏み出した右足をとられ、体が宙に浮く。とっさに踏み出した左足は変な形で着地、支えきれずに体はそのまま左方向へ倒れ、左肩から着地。「・・・・っつぅぅ・・・・」周囲に人気はなく、一人で何とか立ち上がり駅へ。丁度やってきたいつもの電車に小走りで駆け乗った。

 車中で左足の痛みが尋常でないことに気がついた。立ち上がるときには動いた左腕はまったく動かせなくなっている「こりゃ変だぞ」。乗り換え駅で下車してタクシーに転がりこみ、救急対応の総合病院の名前を告げる。足を引きずりながらやって来た自分に「お客さん、ひょっとして転倒されました?」「・・・・ハイ・・・」「災難でしたねぇ。結構降りましたからねぇ・・・」気のいいドライバーさんの話は全く耳に入ってこない。救急の受付を済ませ、診てくれたのは内科の先生。レントゲンを撮ると左足首が骨折。左肩は脱臼しているという。整形外科の先生は今から駆けつけて来るので、8時には到着するとのこと。この時点で7時少し前。1時間待つのかと思うと気が遠くなる。うすら寒い待合室、車椅子に座って一人待つ。左手首が車椅子の金属製の手すりに触れて物凄く冷たい。ほんの数センチ手を動かせば良いのだが、それができない。しばらくすると窓から朝日が差し込み、頬に暖かかった。心を真っ白にして待つ1時間、「お待たせしてすみません、大変でしたね!」先生が到着したのは丁度8時頃。急いで駆けつけ、着替えをする前にまず一声かけてくれた。ありがたやぁと拝みたくなった。

 外れた左腕を戻す際に麻酔を使ったのだが、不思議な体験をした。点滴から薬を投入され「お名前を呼びますから、返事をして下さい」と言われる。「HATA_Kさん」「はい」「HATA_Kさん」「はい」「HATA_Kさん」「はい」「HATA_Kさん」「はい」(ナカナカ効かないなぁ・・)「HATA_Kさん、終わりましたよ」「?????」知らぬまに事は済んでおり、その間3分ほど自分は意識を無くしていたそうだ。ナカナカ効かないなぁと思ったのがそれより前なのか後なのかも分らない。気を失ったことさえも気付かせないとは、麻酔恐るべしだ。

 骨折した左足首をギプスで固定し終了。勤めは休みをもらうことにし、タクシーで自宅へ。玄関先、何気なく左足に体重をかけたら激痛が走った。3段ある階段を上がるのに難儀しながら、何とか転がり込む。数時間前、よく一人で電車とタクシーを乗り継いで病院まで行けたものだと感心する。左腕は三角巾で吊られ、バンドで体に固定されているため、松葉杖が使用できない。従って、移動はもっぱら元気な右足一本に頼らざるを得ない。普段住み慣れたわが家だが、こうなるとまるで障害物競走のコースのようだ。トイレに行くのでさえ、普段の10倍の時間と気合と決心とが必要だ。実は骨折したのはこれが初めての体験。ギプスがとれるまで4週間程度かかるそうだが、さてさてどうなる事やら(笑)。

『トヨタの片づけ』


 あなたのデスクまわりは、こんな状態ではありませんか?本書は冒頭で読者に問いかける。「必要な書類を探すのに10秒以上かかる」「1週間以上使っていない文房具がある」「引き出しのいちばん奥にあるモノが何かを即答できない」「デスクの上にありながら、1ヵ月以上触れていない書類がある」・・・・じっくり考えるまでもなく、4つともあてはまることは明白だ。

 著者はOJTソリューションズという会社。2002年にトヨタ自動車リクルートグループによって設立。50人以上の元トヨタの社員がトレーナーとして在籍するコンサルタント会社なのだそうだ。数あまたあるトヨタの手法やノウハウの内、この本は「片づけ」について書かれている。たかが片づけとあなどれない、トヨタの片づけとは「ムダがなくなり、効率が上がり、売上が上がる」ものなのだそうだ。逆に片づけができていないことは、ロスを増やし、業績にマイナスとしてはたらく。先ほどの問いから始まる冒頭の部分は、次の言葉で結ばれる。片づけは、あなたの仕事や職場を変える「ビジネスツール」なのです。

 本書には片づけの意味や意義を説いて、その後で具体的な片づけの方法が示されるのだが、どれも実に明確で分りやすい。トヨタの現場で長年かけて磨き上げられてきた論理であり方法であるからだろう。きちんと筋道が通っている物事を説明するのは難しいことではない。

 こんな本を手にとったのには理由がある。商社の営業マンとして長年やってきたが、効率化という言葉が最近身にしみる。自分は瞬発力より持久力。ハードワークを常としてなんとかやってきたのだけれど、最近はちょっとそれも限界かなぁ・・・などと思ってしまうのだ。残業時の集中力が驚くほど低い。すぐ目が疲れるし、首や肩がバキバキになる。そして気が付けば何か理由をつけてBeer timeに突入しているという状態。困ったものだ。冒頭の4つの問いでは「必要な書類を探すのに10秒以上かかる」というのが最も頭が痛い。時間のロスをしている事をとても感じ、以前から何とかしたいと思っていたのだ。デスク周りや書類をきちんと片付け、効率よく仕事ができ、心おきなくBeer Timeに突入できるようになりたいものだ。

 それにしても、この本のタイトルには考えさせられる。頭に「トヨタの」と付くと、それだけで「何だかスゴそう」と思ってしまうのだ。そう、トヨタという一企業名がブランド的に働くのだ。ここが愛知県であることを差し引いても、日本人のかなりのパーセンテージにとって、この枕ことばはプラスに働くと思う。実際、この出版社から『トヨタの口ぐせ』『トヨタの上司』という本が出版されている。目ざとい出版社はきっと二匹目のドジョウを狙ってくるに違いない。遠くない将来『トヨタの勉強法』が受験生のバイブルになり、『トヨタ購買のお買い物』は主婦の間で大ヒット。若者はこぞって『トヨタ社員の恋愛指南』をむさぼり読み、そしてついには『トヨタ増毛法』や『トヨタ式で血糖値が下がる!』なんて本まで出版される・・・。そんなことは無いだろう。

トヨタの片づけ
作者: OJTソリューションズ
出版社/メーカー: 中経出版
発売日: 2012/11/14
メディア: 単行本

『古事記1300年 大須観音展』


 名古屋市中区にある大須観音名古屋市民には「大須の観音さん」と親しまれている。このお寺の収蔵品の数々を見せてくれる『古事記1300年 大須観音展』を見てきた。場所は名古屋市博物館、例によって休日出勤後のお楽しみだ。

 閉館間際の博物館、訪れたのは17年ぶり。この展示会、国宝4点、重要文化財16点を含む大須観音の所蔵品の数々とともに、門前町として栄えてきた大須の町の変遷と歴史を紹介している。中でもお目当てはチラシの写真、古事記の写本(国宝)だ。古事記は読んだことがないが、大須観音に国宝の写本があるとは知らなかった。是非この目で見てみたいと思っていたのだ。

 時間も無いので古い書物や巻物、掛け軸などをザザッと観ながら進むと、順路の6分目あたり、独立した展示ケースの中にその写本はあった。南北朝時代の1371〜72年に作られたもので、現存する最古の古事記なのだという。サイズはB5くらいで、厚さは1cmも無い。小学校の頃に使ったノートくらいの本が上中下の3冊で、薄茶色くなった紙には丁寧に書かれた文字が並んでいた。意外と小さいなぁというのが正直な印象だ。、

 640年前に書かれたのだと思うと感慨深いが、古事記のオリジナルは今から1300年前。これは丁度半分、折り返しの頃の写本なのだ。現在ではこれが一番古い写本となってしまったけれど、今ではもう無い幾多の写本の延長線上に、この写本があるのだ。印刷機の無かった昔、時代を超えて、幾多の人々が一文字一文字書き写して伝える写本というリレー。地味だけれども物凄い力強さを感じた。こういう地道なリレーの積み重ねで人類は進歩してきたのだなぁとしみじみ思った、休日の夕暮れ時だった。

初めてのCTスキャン


 朝6時10分頃のこと。通勤途中の乗り換え駅、階段を登る途中の踊り場で転倒した。それほど勢いがついていたわけでもなく、上手く受身も取れたと思ったのだが、踊り場の先に続く階段に額をぶつけてしまった。「あっ、ヤバイかも・・・」ポタ、ポタと階段に落ちる赤い点が次第に大きくなっていく。「大丈夫ですか?」通りがかりの人が駅員さんを呼んでくれ、駅員さんが救急車を読んでくれた。

 病院に到着するとお医者さんや看護士さんが大勢で出迎えてくれた。おそらく二十名近くいたんじゃなかろうか。患部を診てもらうと、かなり長く切れているので縫う必要があると言われ、念のためレントゲンとCTスキャンを撮りますとも言われた。レントゲンは健康診断や歯科医で数え切れぬほど経験しているがCTは初めて。出血も痛みも治まっていたので心にいくらか余裕があったのか、少し楽しみな気持ちになった。

 レントゲンの後、若い綺麗な女医さんに案内されて別室へ向かう。部屋に入ると、TVなどで見覚えのある、あの丸い穴のあいた機械がドンと横たわっていた。「おぉ、CTスキャンだ!」初めての体験に痛みもどこへやら。興味深々、ワクワクしながら横になる。寝台がゆっくりと動いてあの丸い穴に頭が入って行き、所定の位置で動きが止まった。一時の静寂の後、丸い穴の内側を何かが回り始める。シュンシュン軽い音を立てて回っているのはX線を出す部分と受ける部分なのだろう。程なく寝台がゆっくりと足の方へ動いていき、頭だけの撮影はあっという間に終了。何だかあっけなく、少々物足りない気持ちだ(笑)。部屋から外に出ると、すぐに異常なしとの診断が下った。こちらもあっけなかったけれど、やはりホッとする。別室へ案内され、歯科医院にあるような椅子に座り、爽やかなイイ男の先生に傷を縫合してもらう。麻酔をチクチク、そして全部で7針。薬をもらってお勘定を済ませ勤め先へ向かった。

 約1時間の遅刻で出勤し、終日皆の話題の中心となった一日は何だかとっても長かった。写真は帰りに購入したガーゼとテープ。駅員の皆さん、サイレンを鳴らしながら走る救急車に道を譲ってくれた皆さん、そして夜勤明け間近で恐らくお疲れMAXだったであろう病院の皆さんに感謝!

名古屋市科学館


 土曜日の午後、休日出勤の帰りに名古屋市科学館に行ってきた。勤め先の事務所から徒歩10分程、冬晴れの空の下、時折吹きぬける風に肩をすくめながら一人歩く。2011年3月にリニューアルオープンした名古屋市科学館は、巨大な銀色の球体を抱き込むような外観が特徴的だ。大阪から戻って以来一度行ってみたいと思っていたのだが、やっと出かけることができた。

 ガラス張りのエントランスで800円払って館内へ。2F〜6Fが展示フロアになっていて、どの階も見学に訪れた子供達で賑やかだ。テコの原理や滑車の原理、音の伝わりかた、いろいろな鉱物の展示、宇宙や地球のしくみなど、見て触って、楽しみながら科学の基礎を学べるようになっている。館内のエスカレーターの機械部が見えるようにしてあるのも面白い試みだ。木やプラスチック、金属など色々な素材の10cm角の立方体が並べられていて、それを実際に持ち上げて比重の違いを体感する展示には感心した。

  建物中央にある巨大な球体の上半分はプラネタリウム。直径が35mあり、これは世界一の大きさらしい。全席指定のシートの座り心地は上々。リクライニングするのは当然だが、一脚ずつ独立していて、左右に回転するので、観やすい角度で星空を眺めることができる。この日の演目は『冬至の太陽』。地球が自転する地軸が、太陽の周りを回る公転面に対し23.4度傾いているから、夏と冬とで日照時間が異なってくるのだ・・・という事を、非常に分りやすく解説してくれた。冬の夜空を彩るオリオン座、おうし座、ふたご座、プレアデスに冬の大三角形・・・。温かな館内、満点の星空、座り心地の良いリクライニングシート・・・途中の記憶が曖昧だ(笑)。


 名古屋市科学館は1962年開館で今年50周年らしい。自分も小学生の頃、学校の遠足や子供会の行事などで何度となく訪れた。新幹線ひかり号(0系)の運転席や列車ジオラマ、匂いの出る装置、プラネタリウムも大好きだった。前述の通りリニューアルして生まれ変わった科学館、昔と比べると館内は随分綺麗になり、タッチパネルの液晶画面で動画を見せたり、人工的に竜巻を作る装置(写真)など、文字通り科学の進歩が感じられた。それでも未知の科学に触れるワクワク感は今も昔も変わらない。科学好きだった子供の頃に帰った土曜の午後だった。