のんびりサイパン


 勤め先の旅行でサイパンに行ってきた。先週の金曜から四泊五日、日常を離れ、しばし常夏のリゾートを満喫してきた。この時期サイパンは雨期なのだが、日に数十分間雨が降る以外はおおむね晴天。日中は強烈な日差しが降り注ぐけれどジメジメ感は少なく、朝夕は涼しくてとても快適だった。

 サイパンはこれが3度目だったのだが、一昨年訪れたグアムとは随分印象が違う。グアムが南の海に浮かぶ『リトル・アメリカ』ならば、サイパンは『チャモロの楽園』。リゾートとしての規模も小さく、あまり洗練されていないのだけれど、その分素朴でフレンドリー。自分はサイパンの方が気に入っていた。そんなサイパンで今回はのんびりゆったりと過ごすことに決めていた。

 宿泊したハイアットリージェンシーのビーチはいつ行っても空いていた。遠浅で、白い砂浜とエメラルドグリーンの海が眩しい。パラソルの下、白いデッキチェアーに横たわって午前中からバドワイザー潮騒をBGMに小説を読めば、日常は遥か彼方へ飛んでいってしまう。それに飽きたらウトウト昼寝をしたり遠浅の綺麗な海に浸かったり…。時間が潮風に乗ってゆっくりと流れていく。四泊五日の内、丸二日はこんな風に贅沢な時間を味わうことができた。

 実は今回の旅で驚いたことがある。この前サイパンに行ったのは16年前、子供達が1歳と3歳の夏休みだったのだが、当時と比べて今のサイパンはものすごく寂しいのだ。ガラパンの街も閉まっている店舗が目立ち、昼間など寂れた温泉街のよう。当時メインだった日本からの観光客がおよそ1/3に激減し、サイパンの人口も随分減ってしまったのだそうだ。日本の不景気はこんな所にも影響しているのだろう。南の島のリゾートが輝きを取り戻すためにも、日本経済が頑張らなきゃと真剣に思ったりした。

 とは言っても、ビーチに出れば海は昔と変わらぬ美しさ。静かにのんびり過ごすには人が少ないのはかえって好都合だ。少々寂しげだったけれど、静かな環境でたっぷり癒された四泊五日だった。これで年末まで突っ走ることができそうだ。



 基本的にのんびりと過ごしたのだけれど、こんなことやこんなことも・・・・。

コメダ豆


 土曜の夕方、休日出勤の帰り道。一つ先の駅までのんびり歩くと風が心地よく頬を撫でる、良い季節だ。コメダ珈琲店に立ち寄り一人くつろぎタイム。出張先などで喫茶店はよく利用するのだが、着席即ノートパソコン起動のサテライトオフィス状態が常。たまにはのんびり喫茶店で過ごしても罰はあたるまい。

 店内は帰宅前の一時を過ごす人たちで適度な賑わい。お水と熱々おしぼりを持ってきてくれたお嬢さんにホットコーヒーをオーダーした。コメダ珈琲店は名古屋発祥のコーヒーチェーン。愛知県下ではどこに行っても必ずお目にかかる。今HPで調べたら愛知県に264店、全国で458店あるそうだ。やはり半分以上が愛知県下にあるのだ。木の温もりが感じられる店内に、ソファー席が定番で、高めのパーテーションがブライベート感を演出してくれ居心地が良い。コメダ珈琲店は繁華街だけでなく、郊外の住宅地にも多数出数出店している。新聞や雑誌を読みながら長時間過ごせる、地元民のくつろぎスペースなのだ。コーヒーは昔ながらの喫茶店の味。今風に小洒落ていないのも安心できて良い。

 コメダ珈琲店では飲み物におつまみが付いてくる。小袋に入った豆菓子なのだがこれが妙に美味しい。自分は勝手に『コメダ豆』と呼んでいる。正式名称は不明だが、周囲の愛知県民に「コメダ豆って美味しいよね」というと、大抵は「あぁ、アレね」とワカッテもらえる。コメダのロゴが印刷された、クリーム色の小さな袋に入って出てくるコメダ豆。ピーナッツに衣がついていて、ほんのり甘くて少し塩味。その加減が絶妙でコーヒーによく合うのだ。袋からお皿に移してポリポリ。いつもの味が嬉しい。

 喫茶店激戦区の名古屋では、コーヒーにおつまみが付いてくる事は珍しくない。ナッツだったり柿の種だったりイロイロだが、コメダ豆のポイントは高い。一袋10円で小売もしてくれるらしい。さすがコメダ珈琲店

ハクサンすじ焼

 三連休最後の日、所用で訪れた神戸三ノ宮。帰りの電車を待つ間、小腹が減って何か食べたくなった。大好きな餃子専門店『赤萬』にも行きたかったけれど、この日向かったのはお好み焼きの店『ハクサン』。JR三ノ宮駅から通りをはさんで海側、「さんプラザ」の一階にこの店はある。美味しいとの評判を聞いていたのだが、訪れたのはこれが初めてだ。

  午後4時過ぎの店内に先客は二名。お好みとBeerで満足気なおっちゃんと、常連と思しきおばあちゃん。小奇麗な店内だが庶民的な優しさが感じられる。注文を聞きにきた爽やかなお嬢さんに生Beerとすじ焼をお願いする。

 生Beerで喉を潤しながら待っていると、焼きたてのすじ焼が運ばれてきた。小ぶりで薄手に仕上げられたすじ焼にはソースがかかっていない。お客が思い思いの味付けするのがこの店の流儀らしい。テーブルにある二種類のソースから甘口をセレクトし、刷毛でペタペタこれでもか!とばかり塗りたくる。青海苔たっぷり、前歯に付いたって構わんもんね。仕上げにカツブシをパラパラとまぶして出来上がり。マヨネーズは無いようだ、賛成。

 すじ焼は神戸お好み焼きの定番で、牛スジ肉とこんにゃくを小さく刻んで甘辛く煮込んた「すじコン」が入っている。小麦粉生地の柔らかさとキャベツのシャキシャキの間で、すじ肉の歯ごたえがシッカリ自己主張している。同時にツルッとしてシコシコのこんにゃくが口の中で踊って、何とも素敵な食感が楽しめるのだ。そして、よく煮込まれたすじ肉は噛むほどに味わい深く、お好みソースの濃厚な味や青海苔の香りに全く負けていない。1センチ角に満たない小粒ながら存在感たっぷり、豊潤なすじ肉の味と風味が口中いっぱいに広がるのだ。

 派手さは無いけれど、深みのある味わいを楽しめる一品、当然の事だがBeerが旨い。すじ焼き800円と中生500円。あっという間に平らげた至福の一時。また来たいと思う、神戸三ノ宮の『ハクサン』だった。

小さな空港と真っ赤なFDA


 立秋が過ぎ、暦の上では秋。しかし「人間の考えた暦なんか知らんもんね」とばかりに、昼間の太陽は容赦なく暑さを届けてくれる。まだ当分はこんな調子なのだろう、おかげで毎日Beerがすこぶる旨い。

 そんな中、出張で九州に行ってきた。普段は新幹線を利用するのだが、同僚が新幹線より安い飛行機があると教えてくれた。フジドリームエアラインズ、略してFDA。静岡本社の新しい航空会社だ。FDAが発着するのは中部国際空港セントレアではなく県営名古屋空港、昔の名古屋(小牧)空港だ。

 当日朝、 空港までのバスが20分近く遅れ、空港に到着したのは出発の12−3分前。焦りながら受付に向かうと、受付のお姉さんは慌てる様子もなく、にこやかで丁寧。県営名古屋空港は非常にシンプルな造りになっていて、チェックインカウンターのすぐ横に手荷物検査のゲートがあり、ゲートの向こうはすぐに小さな待合室。その一角にある搭乗口の先はもう屋外だ。簡単な屋根付きの通路の奥で係員がチケットをチェックして、後は目の前に停まっている飛行機まで10mほど歩くだけ。バスを降りてからずっと同じフロアで登り降り無し。距離も僅かで小さなバスターミナル位のイメージだ。空港への到着が遅れた身としては非常に助かった。これがセントレアだったら、「福岡行きのお客様いらっしゃいませんかー」と叫ぶ係員のお姉さんといっしょに空港内数百m猛烈ダッシュ、空港ではよく見かける風景だが、体験してみたいとは思わない。下手をしたら搭乗できなかったかも知れない、助かった。

 タラップを登りFDAの真っ赤な機体に乗り込むと、革張りのシートが左右に2列並んでいた。福岡までの所要時間は80分。途中でパンとコーヒーとお菓子のサービスがあり、少し嬉しくなる。快適な空の旅は、予定より5分早く終了した。

 九州での仕事を済ませ、帰りのFDAはピンクの機体。ヘッドレストのカバーには漫画『ちびまる子ちゃん』のイラストが微笑んでいた。静岡県つながりということだろうか。名古屋空港に戻ってきたのは午後9時20分。一つずつある売店とレストランは既に閉まっていて少々寂しげ。人影まばらな待合室のテレビにはロンドン五輪の中継で、日本の女子バレーの奮闘が映されてた。

 名古屋の空の玄関として、長く活躍してきた小牧の空港。自分が生まれて初めて飛行機に乗ったのはこの空港だ。そう言えば新婚旅行も、サイパンやグアムへの家族旅行もここから出発した。2005年に開業したセントレアにその役割をゆずり、今ではこの空港に発着するのはFDAだけ。その規模をグググっと縮小し、小さな小さな空港として頑張っているようだ。帰りのバスは幸い時間通りにやってきて、自宅でバレーの続きを観る事ができた(笑)。

3年ぶりの神戸赤萬

 この前の日曜日、所用があり神戸へ。久しぶりの神戸は夏の日差しがまぶしかった。夕刻、帰りの高速バスを待つ間、ぽっかり空いた時間を使って立ち寄ったのが三宮駅北側のサンキタ通商店街の西の外れにある「赤萬」。お気に入りの餃子専門店だ。

 四人掛けテーブル2つとカウンターの小ぶりな店内に先客は3名、店員さんも3名だ。荷物が多かったので一人でテーブル席を使わせてもらい、ビール大びんと餃子2人前をオーダーする。この店のメニューは驚くほどシンプルだ。

 餃子1人前7ケ¥280
 ビール大びん ¥500
    小   ¥350
 お土産用箱1ケ ¥30

これだけ。餃子専門店を名乗るからにはかくありたい。

 よく冷えたBeerで乾いた喉を潤しながら餃子が焼けるのを待つ、幸せのひと時だ。大びんの半分を胃袋へ流し込んだ頃に登場した餃子2人前14ケ。最初は酢醤油でいただく。少なめの油でじっくり時間をかけて焼かれた餃子はこんがり焼き色が美味しそう。厚すぎず薄すぎない皮に包まれたすこし生姜の利いた野菜リッチの餡は、細かく切られた具材が丁寧に混ぜられ、上品な味わいだ。半分ほど食べた後の後半は、酢醤油に味噌ダレを追加して神戸流でいただく。あっさり上品な味わいに味噌のコクが加わって、デラックス感がアップする。Beerをグビグビグビ・・・旨い!

 この前ここを訪れたのは2009年の夏(2009/8/28神戸赤萬)。およそ3年ぶりの赤萬は変わらぬ美味しさで迎えてくれた。今回はあまり時間が無かったが、またゆっくりと食べに来よう。

国立京都国際会館

 今週は梅雨明けの京都に出張。夏の京都は暑い、猛烈に暑い。夕方、駅からホテルまでの道のり、僅か数分で汗だくになる。四条烏丸のホテルにチェックインの後、同行の部下と二人で夕食へ。祇園祭の名残を残す四条通を東へぶらぶら歩くとやはり汗でグダグダ状態。美味しくBeerをいただくためのセレモニーなのだと無理やり納得したが、確かにその甲斐はあった(笑)。

 翌朝、早めにチェックアウトして向かったのは国立京都国際会館。京都の町を南北に走る地下鉄烏丸線の北の終点、国際会館駅で下車し、長い地下通路を歩いて地上に出るとすぐ目の前に国立京都国際会館はある。この日の仕事はここでの展示会だ。開場前に到着し、周辺をぶらぶら歩く。日本初の国際会議場として誕生し、さまざまな国際会議の舞台となったこの会館。1997年には地球温暖化防止京都会議COP3が開催され、「京都議定書」が採択された場所だ。

 京都国際会館が誕生したのは1966年、高度経済成長の時代、日本が「未来」に向かってモーレツに突き進んでいた時代だ。そんな時代の息吹が感じられる建物はまさしく未来的な外観でそびえたっていた。実にクールでカッコイイ。未来の地球防衛軍の基地みたいだと思ったら、TVウルトラセブンで六甲防衛センターとして登場したのだそうだ。ものすごく納得してしまった。

 高度経済成長時代は、昔から外国の進んだ文化を取り入れ学んできた日本が、世界のどこにもない「未来」を自由に描いた時代だったのかも知れない。大阪の万博記念公園を訪れた時に感じた、未来を描き、それに向かって突き進むパワーをここでも感じた。半世紀近く昔に描かれた「未来」からは、どこか懐かしい匂いが感じられた。まがりなりにも当時を生きた世代の感傷なのだろうが、当時を知らぬ世代の目にはどう映るのだろうか。同行した部下に今度聞いてみよう。

スカイツリーを見上げた朝

 火曜水曜と東京に一泊二日の出張。梅雨の合間の好天で、昼間に外を歩くと汗だくだった。初日の夜は麹町界隈で楽しく会食。生ビールとハイボールを3杯ずついただき、23時頃上機嫌でホテルにチェックインした。その時、フロント脇に東京スカイツリーのお土産が沢山並んでいた。「近いんですか?」と尋ねると「3、40分位です」。別に近所というわけではないようだが、話題のスカイツリー、間近で見てみたくなってきた。

 携帯電話のアラームで5時に起床。地下鉄を乗り継いで6時半には押上駅に到着した。地上に出ると、真新しい周辺施設のビルがある。このあたりだけは下町押上のなかでもピカピカの一角なのだろう。あたりには観光客の姿もちらほら見えたが、犬の散歩やジョギングをする地元の人たちの方が多い、平日の朝の風景だった。

 ツリーはどこだ?と、キョロキョロしながら歩くこと数十秒、目の前にテレビで見慣れたあの姿が登場した。デカい。相当にデカい。抜けるような青空を背景に、朝日を浴びた634mは想像していた以上の高さでそびえ立っていた。見上げる首の角度が尋常でなく、後ろにのけぞりながら携帯で写真を撮影(笑)。こんな体勢で写真を撮ったのは初めてかも知れない。こんなデカい物、よく作ったものだと感心する。

 ホテルに戻ってテレビをつけると、今見てきたばかりのスカイツリーが映っていた。今年5月22日の開業から50日が経過し、丁度この日から当日券の販売が始まったのだそうだ。、階上のテラスには、徹夜組を含む百人以上の人達がならんでいたそうだが、全く気付かなかった。登らずに下から見上げただけだったけれど、世界一のテレビ塔を間近で見られたのはちょっと嬉しい。早起きして手に入れた、出張の合間の小さなヨロコビだ。