『古事記1300年 大須観音展』


 名古屋市中区にある大須観音名古屋市民には「大須の観音さん」と親しまれている。このお寺の収蔵品の数々を見せてくれる『古事記1300年 大須観音展』を見てきた。場所は名古屋市博物館、例によって休日出勤後のお楽しみだ。

 閉館間際の博物館、訪れたのは17年ぶり。この展示会、国宝4点、重要文化財16点を含む大須観音の所蔵品の数々とともに、門前町として栄えてきた大須の町の変遷と歴史を紹介している。中でもお目当てはチラシの写真、古事記の写本(国宝)だ。古事記は読んだことがないが、大須観音に国宝の写本があるとは知らなかった。是非この目で見てみたいと思っていたのだ。

 時間も無いので古い書物や巻物、掛け軸などをザザッと観ながら進むと、順路の6分目あたり、独立した展示ケースの中にその写本はあった。南北朝時代の1371〜72年に作られたもので、現存する最古の古事記なのだという。サイズはB5くらいで、厚さは1cmも無い。小学校の頃に使ったノートくらいの本が上中下の3冊で、薄茶色くなった紙には丁寧に書かれた文字が並んでいた。意外と小さいなぁというのが正直な印象だ。、

 640年前に書かれたのだと思うと感慨深いが、古事記のオリジナルは今から1300年前。これは丁度半分、折り返しの頃の写本なのだ。現在ではこれが一番古い写本となってしまったけれど、今ではもう無い幾多の写本の延長線上に、この写本があるのだ。印刷機の無かった昔、時代を超えて、幾多の人々が一文字一文字書き写して伝える写本というリレー。地味だけれども物凄い力強さを感じた。こういう地道なリレーの積み重ねで人類は進歩してきたのだなぁとしみじみ思った、休日の夕暮れ時だった。