きしめん


 GW中の月曜日、休日のオフィス街は道行く人も少なく、ゴーストタウンさながら。ランチを食べるにも開いている店がほとんど無くて途方に暮れる。勤め先のある伏見から、栄方面へ歩くことしばし、やってるかな?と心配しながらたどり着くと、暖簾が掛かっていた。名古屋栄のえびすや、手打そばときしめんが人気の店だ。開いている店が少ないからだろう、午後二時近いにもかかわらず賑わいを見せる店内。座敷の大きなテーブルに通されると、迷わすきしめんを注文する。

 ほどなく運ばれてきたきしめん、小ぶりな油揚げ二切れと三ッ葉にネギ、そしてたっぷりの花かつおが踊っている。透き通ったかけ汁は、関西と関東のちょうど中間のような赤味がかったかつお出し。きしめんの白さが美しく映える。待ってましたと一口すすると、かつおの風味が広がる。麺を手繰りズズズとすすると、平たい麺のツルリとした舌触りが心地よい。唇に触れてブルブルっとする感触も独特だ。そうそう、きしめんはこうでなくっちゃ。味と香りとツルツルした食感を楽しむ。

 名古屋飯なる言葉を耳にするようになって久しいが、きしめんは自分の中では身近さナンバーワンだ。この点で、ひつまぶしや手羽先とは一線を画す。家庭の食卓にも普通に登場する、子供の頃から食べ慣れた味。インパクトは無いのだけれどいつもそばにいてくれる、家族のような存在だ。これからの季節、ざるに上げてつけ汁でいただく「ざるきし」や冷たいかけ汁の「ころきし」もウレシイ。名古屋では冷たいかけ汁のうどんを「ころうどん」と呼び、麺がきしめんだと「ころきしめん」、略して「ころきし」と呼ぶのだ。

 久しぶりに食べた地元の味、ホッとする一時を楽しんだ。大阪から名古屋へ転勤し、4月はもう目の回るような忙しさだったが、GWで何とか追いつけそう。5月は自分のペースで仕事ができるよう、もう一頑張りだ。

総本家えびすや本店

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