熊本だご汁


25年ぶりに熊本に行ってきた。火曜日の午後、大阪の取引先でかなりハードなミーティングを済ませた後、伊丹からのフライト。小雨降る阿蘇くまもと空港は町の中心から少し離れ、周りを森や農地に囲まれた立地。雨に濡れた緑が色濃く、火の国熊本のイメージどおりの男性的な自然を感じさせる。町中までのリムジンバスはおよそ1時間。熊本の町は思っていたより大きく、高台にある熊本城の勇姿を町のあちこちから見上げることができる。加藤清正による名城、時間があれば登ってみたかったけれど、今回は遠くから眺めただけで少し残念。

合流した部下と、取引先の方を交え、ホテル近くの居酒屋「瀬戸」で会食。ご当地名物の馬刺、辛子れんこん、ぐるぐるなどに舌鼓を打つ。気の良い大将は以前名古屋市に住んでいたということで話に花が咲き、球摩焼酎のきりりとした味わいに心地よく酔う。

翌日は町外れにある大きな会場での展示会。部下と二人で終日立ちっぱなしで商品のPR。普段から出張や外出は多いのだが、日がな立ちっぱなしという事はめったに無いため結構こたえる。16時の終了時刻が近づくと、時計見ながら「あと20分」「あと10分・・・」と、まるで部活の練習が終わるのを心待ちする中学生のような心境だった(笑)。

写真は熊本の郷土料理「だご汁」。帰り便を待つ間、空港のレストランでいただいた。薄口のすまし汁に小麦粉のだんごが入っている。だんご汁が詰まってだご汁になったのだろう。鶏肉や沢山の根菜も入って素朴な味わいが美味しく、汁まで全部飲み干した。

昔、祖父母の家に遊びに行くと、必ずリクエストして作ってもらったのがだんご汁。熊本のだご汁とは違い地元名古屋の赤味噌汁がベース。小麦粉のだんごの外に具はなく、きわめてシンプルで素朴な味わい。赤味噌の辛さが小麦粉の甘さを引き立て、団子のもちっとした歯応えが大好きだった。お昼前、台所に立つ祖母の後ろで出来上がりを待ちながら、大勢集まった従兄弟達と「だんご汁食べよ!だんご汁食べよ!」と連呼した事を覚えている。最大8人の孫たちの胃袋を満たすため、てっとり早く作れるだんご汁は最適メニューだったのだろう。結果自分の中で「お婆ちゃんの味」と言えばこのだんご汁だ。料理上手でもてなし好きだった祖母にとっては不本意な事だろう(笑)。そんな昔を思いつつ、帰路についた。