『三匹のおっさん ふたたび』


 有川浩の『三匹のおっさん ふたたび』を読んだ。あらためて言うまでもないが、去年の夏に読んだ『三匹のおっさん』(2009年初版)の続編だ。三匹のおっさんとは、定年後系列のアミューズメントパーク「エレクトリック・ゾーン」に嘱託となった剣道の達人キヨ、居酒屋「酔いどれ鯨」の元店主で柔道家のシゲ、そして機械いじりが高じて脱サラし、小さな町工場を一人切り盛りするノリの三人。子供の頃「三匹の悪ガキ」と呼ばれた武闘派二人と頭脳派一人の同級生三人組が自警団を結成し、トラブルを解決する痛快活劇。

 町内に起こる6つの事件を三匹のおっさんが次々と解決していくのは前作同様に楽しめた。今回は放火、ゴミの不法投棄、転売目当ての万引き・・・前作と比べて格闘シーンが控えめなのが少し残念だけれど、その分登場人物が書き込まれていて、心の動きが細やかに表現されている。あぁ、この人こういうの書くの得意なんだよなぁ、『阪急電車』を思い出した。

 本作では別に犯罪を犯したわけでない、ごく普通の大人が見せる弱さや醜さが随所に描かれている。お金にだらしがなかったり、やたらと権利をふりかざしたり、子供をきちんと叱れなかったり、逆恨みや不要なおせっかいをしたり・・・・。確かにそうすべきではないけれど、法には触れないし、悪気があるわけでもない。誰でも一度や二度は経験がある。でもそんな行動が誰かをひどく傷つけたり、モラルを低下させることも有るのですよ、と有川浩が語りかける。う〜ん、胸の隅がほんの少し痛くなったぞ。

三匹のおっさん ふたたび
作者: 有川 浩
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2012/03/28
メディア: 単行本