『ガンジー』

 マハトマ・ガンジーの伝記、1982年公開の映画だ。帝国主義の植民地としてインドは1877年以降大英帝国により統治されていた。それから70年後の1947年にインドは独立したのだが、その立役者、インド独立の父といわれているのがマハトマ・ガンジーだ。
 広大な植民地とそこに古くから生きてきた人々を統治し続けるというのはとてつもなく大変な作業なのだろう。それは隣国との戦争に勝利し、国境線を向こう側へ押し広げる事とは次元が違う。「10万人の英国人に3億5000万のインド人は支配できません。インド人の協力なしではね」ガンジーの主張は実に的を得ている。「非服従」はこの意味で強力な武器になる。インド人達のストライキで国の機能は麻痺するのだ。何があっても決して相手の言うことを聞かない「非服従」の前に、統治する側の怒りは頂点に達する。

 ここで大切になってくるのが「非暴力」。言うことを聞かせるためにどんなにひどい事をされても、こちらは決して手を挙げないのが「非暴力」だ。「非服従」に怒ったイギリス人が「非暴力」のインド人に対して手を挙げるとそれは、「無抵抗の人間に暴力を振るう」ということになる。これはイギリス人の良心と国際世論に問題提起することになる。これがガンジーの戦略だろう。逆に暴力に対し暴力で対抗するとしたらそれは最悪だ。この映画の中でも警察の暴力に対しインド人が腹を立て、やり返してしまったシーンが描かれている。これは相手の思うつぼ。弾圧の口実を与えるからだ。

 そんなガンジーとは考えの違う人、ついて行けない人も多かったと思う。しかしガンジーの戦術はインド人全員の協力なしに機能しない。皆の足並みが揃わぬとき、ガンジーはもう一つの作戦をとる・・・・。

 広大なインドの大地を背景にガンジーの半生が描かれる188分。見応えのある1本だ。