『市民ケーン』


 個人的に実施している「タイトルは知ってるけど観たことがない映画を観てみよう運動」の一環で『市民ケーン』を観た。映画史に燦然と輝く名作中の名作だ。この映画が公開されたのが1941年。当然モノクロ画面+モノラル録音。当時として画期的な技術やアイディアが山盛りなのだろうが、素人目にはどうしても単調に映ってしまう。ダイジョウブかな?心配しながら観始めたが、程無く画面に引き込まれていった。

 物語は新聞王と言われた大富豪ケーンが彼の大邸宅「ザナドゥ」で息を引き取る所からはじまる。ケーンの最後の言葉は「バラのつぼみ」。この言葉の意味は何?記者のトンプソンがケーンと親しかった人達への取材を始める。観客は取材の中での回想という形でケーンの波乱万丈の人生を知ることになるのだ。果たして「バラのつぼみ」の謎は解けるのか・・・・。

 ケーンを演じたのが20代のオーソン・ウェルズオーソン・ウェルズといえば先日観た『第三の男』、ラジオドラマでの「火星人襲来」のエピソード、あとは新聞広告で目にする英会話教材くらいしか知らない。この映画では莫大な富を築くパワフルでエネルギッシュな男を好演。併せて大組織のトップのふてぶてしさ、傲慢や独善、孤独までもみごとに表現している。画像の悪さも幸いしているのだろうがとても20代には見えない。

 「バラのつぼみ」の結末は書かないが、自分は人生の最後に一体何と言うのだろうか。ケーン同様「バラのつぼみ」的な何かを想いつぶやくのだろうか?どうでもよいけれど、あまり変な事は言いたくないなぁ…などといらない心配をする。

 ところでこの映画のタイトル、どうして『市民ケーン』なのだろう。途中で自分の事を「アメリカ市民だ」と言うシーンがあったからだろうか。それとも宮殿に住んでいても王様ではなかったからか。それにしても日本語の「市民」という言葉のイメージはケーンにどうも似合わない。でもこう思うのは、自分を含め「小市民」ばかりの中で生きているからかも知れない。

市民ケーン [DVD] FRT-006

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