『駅馬車』


 1939年公開、ジョン・ウエインの出世作となった西部劇の名作。とても有名な作品なのでTV等できっと目にしているのだろうが、全編通して観たのはこれが初めて。

 アリゾナのトント発ローズバーグ行きの駅馬車駅馬車とはその名の通り、決まった駅で客を乗せる馬車。電車や汽車と違うのはレールが無いことか。6頭の馬に引かれる馬車の室内はベンチシートが前後に向かい合う、列車のコンパートメント席のような形。しかし窮屈でお世辞にも快適とは言い難い。乗客は軍人の妻、キザなギャンブラー、アル中の医者、娼婦、ウィスキーの営業マン、銀行員、そして脱獄囚のリンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)。前後の席になんとか3人ずつ、一人は足元の床に座らなければならない。気弱な御者と保安官を加えた9人はインディアン“ジェロニモ”の襲撃に怯えながら道なき荒野をひた走る。

 同行の9人はそれぞれ立場や境遇が異なる。いささか誇張されているが、明確にキャラクター付けされていて面白い。この9人の人間模様が映画に深みを与えている。もちろんラブロマンスもアリだ。そして馬を使っての戦闘シーン。馬車の馬に飛び乗ったインディアンが撃たれ、馬から落ちた上を馬車が通り過ぎるシーンは命がけの撮影だったのだろう。

 西部劇とはアメリカの時代劇。日本の時代劇同様、勧善懲悪の分かりやすい構図がある。西部劇の場合「悪」はインディアン。映画史に残る名作といえども、現代ではアメリカ国内での上映は難しいという。DVDは販売されているのか、アメリカのamazonで探してみたら15ドルで売られていた。事の是非はともかく、少しホッとしたというのが正直なところ。しかし、このDVDを購入することは、アメリカでどう評価されるのだろう?白人至上主義者のレッテルを貼られ軽蔑されるのか、前時代的なヤツと呆れられるのか、いやいや意外と普通な事なのか・・・。誰にも気兼ねせず、時代劇を楽しめるという一点において、日本人でヨカッタと思った。それにしても公開当時32歳のジョン・ウェインは確かにカッコイイぞ。

駅馬車 [DVD] FRT-058

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