『ボルケーノ in ポンペイ』


 西暦79年、ヴェスヴィオ火山の噴火により一日にして滅びた都市ポンペイ。その数年前に起こった大地震の傷跡から立ち直り、ポンペイは再び繁栄を極めていた。ローマ帝国騎馬隊の戦士だったマルクスとその恋人ヴァシリア。結婚を間近に控えたある日、ヴァシリアの兄に殺人の嫌疑がかかる。処刑まであと2日、義理の兄になる男の無実を証明するため、マルクスは真犯人探しにポンペイの町を奔走する。しかし町を見下ろすヴェスヴィオ火山は不穏な動きを見せていた・・・。2007年のイタリア映画。

 火山爆発のパニック映画かと思いきや、謎解きミステリーでもあり、ラブロマンスでもある。さらに、家族愛、男の友情、政治腐敗、奴隷制度、信仰などなど、テーマが盛り沢山の花盛り。よくぞこれだけ盛り込んだものだと感心してしまう。一日にして滅んだポンペイにも我々同様普通の暮らしがあった。それはまさしく種々雑多なあれやこれや。良いこともあれば悪いこともある中で、皆それぞれの人生を懸命に生きていたはず。そんな日常のすべてを覆す天変地異を描くため、観る者の視点をポンペイ市民と同じ地平に持ってきたかったのかもしれない。イタリア同様の火山国に住む身として、ある程度の身近さを感じつつ観た。

 この作品でもリアルに表現されているが、火山の噴火、大地震など、自然の力の前で人間や人間の作った物、文化はあまりに無力だ。また、戦争や政変で今まで築いたものが無に帰するということも、人類はこれまで幾度と無く経験してきたのだろう。しかしながら、全く幸いなことに、これまで自分はそういった経験をせずにすんできた。昨今の為替変動もリーマンショックも、バブル経済の崩壊も、山を駆け下りてくる火砕流と比べれば誤差範囲の小さな出来事にすぎない。ほぼ同じ価値観の支配する世界で、同じ流れの中での出来事だ。そんな中で生きてこれたのは幸せなことだろうが、稀有なこと。いつひっくり返るか分からない、不安定な足場の上での営み。明日には目の前の山が火を噴くかも知れないと心の片隅で思っておくことにしよう。

 噴火で町を覆った大量の火山灰がポンペイを包み隠し保存した。そのため、18世紀以降発掘されたポンペイには後世の手が加わっていない、ありのままの古代ローマの姿がある。歴史という目でみれば奇跡のような出来事であり、その意味で我々日本人にとっても有名な町だ。残念ながら訪れたことはないが、いつか行ってみたい町のひとつだ。

ボルケーノ in ポンペイ 都市が消えた日 [DVD]
メーカー/出版社: ビデオメーカー
発売日: 2010/10/02
ジャンル: DVD