『お熱いのがお好き』


 1929年、禁酒法下のシカゴ、サックス奏者のジョーとベーシストのジェリーは偶然ギャングの抗争の目撃者になってしまう。命を狙われることになった二人はマイアミへ演奏旅行に行く楽団に紛れ込み、シカゴを抜け出すことにする。しかしこの楽団は女性だけの楽団。マイアミ行きの列車に駆け込んだ二人は何とスカートとストッキングを身につけ、ハイヒールを履いていた。この楽団でボーカルとウクレレを担当するのは魅力的な女性シュガー。二人の大柄な女(?)はシュガーにゾッコンになってしまう・・・・。


 アメリカのセックスシンボルと言われたマリリン・モンロー。足元からの風にあおられた白いスカートを押さえる写真やジョン・F・ケネディ大統領にHappy birthday to youを歌う映像、ウォーホールの作品などでその姿はもう何度となく目にしてきたのだけれど、出演映画を観たのはこれが初めて。この作品ではお酒が好きで惚れっぽく、情熱的なのだけれど何度も男にだまされる、自称“バカな女”のシュガーを演じている。モノクロ画面の中で白く輝くブロンドと甘ったるい声、コケティッシュな微笑み。こりゃぁ世界中の男が夢中になるのも無理はないと深ーく納得。


 「タイトルは知ってるけど観ていない映画を観てみよう運動」の一環で観た1959年のモノクロ映画。119分の間に歌あり、踊りあり。ドタバタもあれば、恋もある。おまけにギャングまで出てきてマシンガンをぶっ放す。盛りだくさん過ぎるほど盛りだくさんなコメディーなのだけれど少しも散漫じゃぁないのは、それらのバランスが良いから。そして話の筋が明確だからだろう。「もう恋はしないわ、電話もくれないあなた・・・」傷心のシュガーがピアノの上に座って歌う”I'm Through With Love”の甘いメロディーが耳に残る。幸せな気持ちになれるコメディだ。