『LIMELIGHT』


 ジャズバイオリニスト寺井尚子の『LIMELIGHT』を聴いた。2010年2月の『My Song』以来1年1ヶ月ぶりのニューアルバムだ。LIMELIGHTは言わずと知れたチャールズ・チャップリンの映画のタイトル。モノクロの渋いジャケットはその世界観を表すのだろうか。ショパンのプレリュード、J.S.バッハシャコンヌとクラッシクで始まりゴッドファーザー愛のテーマ、エル・チョクロと続く。ヴァイオリン、ピアノ、ベース、ドラムスというシンプルな構成で、クラシック、映画音楽、アルゼンチン・タンゴと、幅広いジャンルの名曲が寺井尚子のジャズで楽しめる。

 アルバムタイトルのライムライト(テリーのテーマ)は5曲目の『チャップリン・メドレー』で聴ける。有名な美しい旋律、どう聴かせてくれるのか興味深々だったが、寺井尚子のヴァイオリンは物悲しげだけれど華やかに歌い上げる。ピアノとの掛け合いも絶妙で「おぉ、そう来なくっちゃ」。期待を裏切らない演奏、このアルバムでは一番のお気に入りになった。驚いたのはムソルグスキーの『展覧会の絵』。ポップで軽快、爽やかなアレンジに「え、これがあの『展覧会の絵』!?」とビックリした。ボーナストラックの『Summer Fantasy』はお洒落で小気味良く、聴いていて思わず微笑んでしまった。寺井尚子作のオリジナルだが、この夏金鳥蚊取り渦巻きのCMで使われるそうだ。

 ヴァイオリンの音色とウィスキーとともに過ごす夜。慌しい日常を忘れ、甘くシットリした時間が流れる。一人静かに耳を傾け、グラスを傾ける。ロックがカランと音を立てた。

ライムライト
アーティスト: 寺井尚子, J.S.バッハ, アンジェロ・ヴィジョルド, ショパン, ジュリオ・カッチーニ, ニーノ・ロータ, ムソルグスキー, ルイ・プリマ, レナード・バーンスタイン, 北島直樹
メーカー/出版社: EMIミュージックジャパン
発売日: 2011/03/16
ジャンル: ポピュラー音楽