公演中止


 一枚の葉書が届いた。6月に来日予定だったシュトゥットガルト室内管弦楽団の公演中止を告げる葉書だ。東日本震災の影響で来日が中止となったのでチケットを払い戻しするという内容。びっくりして残念な気持ちになった。

 自分の勤め先は毎年春の行事として芸術鑑賞がある。社員の教養レベルを少しでもアップさせようというトップの涙ぐましい思いから、費用会社持ちでコンサートや演劇を観に行くのだ。劇団四季のミュージカルやシルク・ドゥ・ソレイユのサーカスなど肩の凝らないものもあったけれど、オーケストラやバレエ、歌舞伎や能楽を観に行ったこともあった。シュトゥットガルト室内管弦楽団が聴かせてくれるはずだったプログラムは、モーツァルトのアイネ・クライネにバッハのブランデン5番と管弦楽組曲2番。ピリオド楽器ではないけれど、有名どころを押さえた曲目は日ごろクラシックを聴かないメンバーにも丁度良かろうと思い、大阪支店の行事として自分がセレクトした公演。ものすごく残念だ。

 代替の公演を探そうとインターネットであちこち調べていて分かったのだけれど、外国のオケの来日中止の何と多いことか。シュトゥットガルト室内管弦楽団が来るはずだった大阪のザ・シンフォニーホールのHPを見たら、5月6月に予定していた外国のオケや演奏家の公演のおよそ半分が公演中止になっていた。

 演奏家一人ひとりの意向は別にして、同行するスタッフを含め楽団全体の総意としてリスク回避を計ることは理解できなくもないが、それを上回る「芸術家魂」のようなものは無いのか?音楽で日本を元気付けようとは思ってくれないのか?と悲しくなった。それと同時に、実は彼らの判断こそ正しくて、福島第一原発周辺のみならず日本中が本当に危険な状態で、知らぬは日本人ばかり・・・なんて事じゃぁ無いよなぁと不安にもなった。まぁ、たとえそうだったとしても海外に疎開できるわけではないし、したくもない。今この時も決死の復旧作業にあたっている多くの日本人がいるのだから。