『ガス燈』


 高名な声楽家の叔母が何者かに殺され、失意の中でポーラ(イングリッド・バーグマン)はイタリアへ留学する。それから10年、グレゴリー(シャルル・ボワティエ)と出会い、結婚したポーラは、ロンドンのソーントン街へ帰ってきた。二人の召使を雇い、幸福そうな新婚生活だったが、ポーラの身の回りには不可解な事が起こるようになる。ガス燈の火が、いつも決まった頃に暗くなるのもその一つ・・・・。

 60年以上昔のミステリー映画。モノクロ画面の中のイングリッド・バーグマンは猛烈に美しい。美しいだけでなく、その存在感がスゴイ。最初のショットは叔母の死を悲しむ10年前のポーラ。次のシーンでは、打って変わって幸せを隠しきれない恋するポーラ。そしてソーントン街へ帰ってきてからは何かに怯え、徐々に精神に異常をきたすようになり、憔悴していくポーラ。そのそれぞれをバーグマンは見事に演じきる。そして終盤、真相を知ったポーラの鬼気迫るシーンは圧巻だ。そして、その全てが目を見張るほど美しいのだから、もうたまらない。2年前に公開された『カサブランカ』では、凛とした気高さと恋する女の弱さの両方がかもし出されて魅力的だったけれど、『ガス燈』ではさらにワイドになっている・・・。

 1944の作品ということは、太平洋戦争の真っ最中。アメリカ人はこんな映画を作り、観ていたのだなぁと関心。

ガス燈 [DVD] FRT-068

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