『テレマン:木管楽器のための協奏曲集』


 『テレマン木管楽器のための協奏曲集』 カメラータ・ケルン
 去年の春購入した「ドイツ・ハルモニア・ムンディ50周年記念BOX(CD50枚組)」を順番に1枚ずつ楽しんでいる。今回聴いたのはカメラータ・ケルンによるテレマン木管コンチェルト集、1996年の録音。テレマンは大好きな作曲家の一人で、数多く聴いてきたが、それでもまだまだ知らない曲が沢山ある。このCDには6つのコンチェルトが収録されているけれど、知っていたのは1つだけ。さすが多作家テレマン、恐れ入る。

 トラヴェルソの協奏曲ロ短調はこのCDで初めて聴いた。格好良い旋律が激しく炸裂する第一楽章、ニ長調に転調して優雅でチャーミングな第二楽章、最後の第三楽章はこの録音では節度ある端整な演奏だけれど、もっと過激な演奏もあったのではないだろうかと想像が膨らむ。オケが休みで通奏低音とソロだけの所など、ソリストは好き放題に装飾をつけたコテコテの演奏ができそうだ。そして最後は当然カデンツァ!腕に覚え有りのトラヴェルソ吹きなら「是非オレにやらせてくれ!」と団長に掛け合ったに違いない。そんな曲だ。

 唯一知っていた曲、リコーダーとトラヴェルソの協奏曲ホ短調は最高に格好良い、大好きな一曲だ。聴き慣れたムジカ・アンティカ・ケルンの録音(1986)と比べてしまうが、より激しいことをより真面目にやっている、そんな印象。

 テレマンの曲に接していつも思うのだけれど、木管楽器の魅力を最大限アピールする事にかけてこの人の右に出る人はいない。この点においては同世代のJ.S.バッハと比べても一枚上だと思う。幾つもの楽器を演奏したというテレマンはそれぞれの楽器の特性、得手不得手を知り尽くしていたのだろう。ひょっとしたらそれぞれの楽器奏者特有のクセや性癖までも把握していたのかもしれない。それ位、テレマンの曲ではそれぞれの楽器がイキイキとその魅力をアピールしている。まるで楽器がヨロコビの声をあげているようなのだ。逆に言うとテレマンは自分のイメージを表現するにあたって、上手に楽器を味方につけていたのだろう。そんな事を再確認できた一枚だ。

テレマン:木管楽器のための協奏曲集