スーパーリコーダーカルテット“こんなリコーダーが聴きたかった!vol.7”


 「帰ってイイ?」「ど、どうぞ・・・」。勤め先を定時に抜け出してスーパーリコーダーカルテットのコンサートに駆けつけた。 阪急西宮北口駅すぐ南にある兵庫県立芸術文化センター小ホール。高い天井に木目を活かした内装がとてもシックだ。ステージをぐるりとすり鉢状に囲む417の客席は勾配が急なので、前の人の頭が気にならなくてよい。ステージ真後ろの席を除いてほぼ満席だ。

 リコーダー、トラヴェルソ奏者の藤田隆氏が、北村正彦、秋山滋、松浦孝成の各氏とともに2004年に結成した「スーパーリコーダーカルテット」。ルネサンスから現代曲まで幅広いレパートリーを持ち、2枚のCDをリリースしている。この日は全国4ヵ所を巡るツアーの最終日、生憎体調を崩した北村正彦氏の代わりに渡辺清美氏の出演だった。ソプラニーノからコントラバスまで28本のリコーダーを駆使する全10曲のプログラムはクラシック、バロック、タンゴにルンバに現代曲と本当に幅広い。曲と曲とをつなぐ藤田氏のおしゃべりも楽しく、リラックスした雰囲気の中でリコーダーの美しい響きに心洗われた。

 昔から室内楽が好きなのだけれど、どちらかというとブロークン・コンソート(異なる楽器による合奏)派だ。色々な音色が個性を主張し合いながら絡み合う楽しさが好きだから。しかしこういう演奏に触れるとホール・コンソート(同じ楽器による合奏)もイイよなぁとつくづく思う。四人が別々に出している音なのに、これ以上ないと思えるほど見事に溶け合い響き合っている。それこそ、一人の人間が4本の指で鍵盤を押す以上に溶け合っているのではないかと思えてしまうのだ。

 どの曲も素晴らしかったけれど、二度目のアンコールで演奏してくれた「大きな古時計」は心に沁みた。子供の頃から好きな曲、ぜひ一度生で聴いてみたいと思っていた。バス・リコーダー3本にコントラバス・リコーダー。ジャズ・ベーシストの木村知之氏による優しくて渋くて、お洒落なアレンジ。完璧なアンサンブルが鳥肌ものだった。演奏が終わり、客席にいた木村氏が紹介されると、満場の拍手が送られた。この曲はスーパーリコーダーカルテットのホームページで冒頭部分を聴くことができる(コチラ)。

 先月5日に大阪市内で開かれた彼らのリサイタルがとても楽しかったので、また聴きにいくぞと一ヶ月の間楽しみにしていた。平日ゆえ、急遽行けなくなる可能性も大きかったのだけれど、幸い何事も無く素敵な一夜を楽しめたことに感謝したい。