『スティング』

 「エンターテイナー」というとても有名な曲がある。初めて聴いたのは小学生の頃。すぐに「大好きな曲」の一つになった。『The Entertainer』、スコット・ジョプリンがこの曲を作ったのは1902年。それから71年後の1973年に公開された映画『スティング』で使われた。映画は大ヒットしアカデミー賞作品賞を受賞。小学生の耳に届いたのはそんな流れの中での事だろう。映画を観たのは今回が初めてだ。

 舞台は1930年代のシカゴ。詐欺師にだまされ金を奪われたギャングのボスが、その詐欺師を殺す。怒った仲間の詐欺師達が集まって、彼のかたきを討ち復讐を果たす話。復讐といっても殺すのではなく、詐欺師らしく知恵とテクニックで大金を巻き上げようというのだ。復讐劇だが憎しみでドロドロのドラマではない。まるで知的なゲームを楽しむようにギャングのボスを追い込む。詐欺師達はまんまとギャングのボスをだまし、ハッピーエンド。観ている者も煙にまかれ、爽やかな後味とジョプリンのラグタイムが耳に残る、軽妙で素敵な作品だ。

 リーダーの大物詐欺師をポール・ニューマン、相棒を殺された駆け出し詐欺師を若き日のロバート・レッドフォードが演じている。スティング(sting)という単語は「騙す」という意味らしいが、「刺す」という意味もある。そう、詐欺師というエンターテイナー達が悪者をチクリと一刺しする。『スティング』はそんなお話だ。そして、映画全編を通じてジョプリンの曲が流れる。

 レンタルで借りて観たのだけれど、DVDが欲しくなった。休日の前夜、画面に映る30年代のシカゴを観つつグラスを傾け、ジョプリンのラグタイムを聴く。そんなのすごく良いかも。

スティング 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]