真冬のアイスクリーム


 窓の外は北風が吹く冬の夜、暖かな部屋で食べるアイスクリームが好きだ。鍋をやった後などにも良いが、深夜にふと思いついて、熱い飲み物などと一緒に夜食代わりというのも良い。カップに入ったバニラアイスも好きだけれど、クランチチョコをコーティングしたアイスバーが一番のお気に入り。飲み物は熱ーい日本茶との組み合わせがベストだな。

 アイスクリーム会社は夏季用とか冬季用とか何も変えていないだろうけれど、冬に食べるアイスはなぜか味わい深いような気がするから不思議だ。きっと食べる自分の方が変わっているのだろう。夏はただひたすら涼を求めているから「オレの体の火照りを冷ましてみろ!」というような荒っぽくて挑戦的な精神で臨むのに対し、冬は「まぁ、そう冷たくするなよ」と心穏やかに対峙しているような気がしないでもない。

 学生の頃よく通った先輩の家。休日前の夜など、たちの悪い後輩が何人か集まり、奥さんの手料理をいただきワイワイ朝まで飲んだ。興が乗ると楽器を演奏したり、アンサンブルをしたりする、そんな仲間だった。食事をご馳走になるのでワインの1本でも下げていけば格好も良かったのだろうが、生憎貧乏学生の身には無理。そんな時よくアイスクリームをもっていった。真冬の夜、原付バイクで一時間程の道のりを震えながらたどり着いてドアを開けると、暖かい空気と明かりと笑い声とが迎えてくれる。「はい、お土産」アイスの一杯詰まったコンビニ袋を奥さんに手渡し、チョット大人の気分だった。最寄のコンビニで数十円から百円程度のアイスをガサゴソと選び、千円ほど出せば結構色々買えたのだ。暖かな部屋で皆と食べた真冬のアイスの冷たさが懐かしく思い出される。

 CO2削減のため、室内でも厚着をして暖房は控えめに・・・という現代のトレンドには逆行しているかも知れないが、暖かな部屋で食べる真冬のアイスクリームは小さな冬の楽しみだ。