夫婦ぜんざい


 三連休の二日目の昼下がり、昨日読んだ織田作之助の『夫婦善哉』にちなんで大阪なんば、法善寺境内の甘味処「夫婦善哉」に行ってみた。小説の中で、ダメ亭主の柳吉が「どや、なんぞ、う、う、うまいもん食いに行こか」と女房の蝶子を誘い訪れる、明治時代から100年以上続く老舗だ。

 6人掛けのテーブルが3つだけの小さな店内に先客は8人ほど。出されたお茶を一口二口すするうち、何も注文せずともぜんざいが出てくる。メニューはこれ一つなのだ。小盆の上にはお椀が二つ。一つの椀に大盛りにするより、二つの椀で出した方がたくさん入っているように見えるという初代のアイデアは大当たりし、この店を人気店にしたそうだが、その伝統は現代に受け継がれている。それぞれの椀におよそ六分目の粒あんの汁と丸い餅が一つずつ。合わせて1.2杯分か、ナルホドなるほど。一つ目の椀を平らげてお茶をいただき、一息ついた後に改めて二つ目のお椀に手を伸ばす。上品な甘さは高級な丹波大納言を丁寧に炊いて作るがゆえ。二杯目も美味しい。そしてこれがおそらく初代の狙いなのだろう、まるでお代わりのもう一杯を追加したようなプチ贅沢な気持ちになった。

 口直しの塩昆布とお茶を飲み干してお勘定。「いつもおおきに、800円いただきます」いえ、初めてなのですが・・・。ふと気がつくと、自分以外のお客は全てカップル。二人で食べると円満になるとの評判もあるこの店、ひょっとしたら男一人で来た客に気を使って常連さんを演出してくれたのかも??浪速の伝統と情緒を堪能できた、素敵な一日となった。

夫婦善哉

食べログ 夫婦善哉