たこ焼き


 ずっと気になっていた店がある。最寄駅すぐ近く、普段利用する入り口とは反対側なので、たまにしか目にしないのだけれど、気になっていた。角地に店を構えるその店はたこ焼き屋さん。テイクアウトは当然だが、イートインもできるようになっている。夕方など、たこ焼きをアテに一杯やっているオッサン達の姿が見える。そこそこ人気のあるお店なようだ。ふと思い立ち、たこ焼き10個380円を買って帰った。

 帰宅しビールとともにいただいた。程よく焼き色のついた丸〜いたこ焼き。ソースの照りが見た目にも美しく食欲をそそる。爪楊枝を使って一つ頬張るとソースの甘さと酸味、青海苔の香りが口の中一杯に広がった。中に仕込まれたタコは大きすぎず小さすぎずの最適サイズ、こりゃいけるかも。続けざまに二つ三つ放り込み、ビールをグビグビグビッ。シアワセの瞬間だ。

 外はこんがり、中はとろ〜り、というのが昨今のたこ焼きを巡るトレンドのようだけれど、実はあまり好きではない。「生焼けじゃん」とお門違いの事を言う気はないが、アツアツを頬張ると口の中ヤケドしてしまう(この点において蟹クリームコロッケと同類だ)。完全に冷めてしまったら美味しいわけないので、ベストのタイミングを見はからうのは難しい。苦行だ。たこ焼きに苦行を求めるほどの求道者ではないのでどうも敬遠してしまう。この店のたこ焼きは程よい固さに仕上げてあり、上記のような苦行とは無縁のありがたいたこ焼きだった。そう言えば「中はとろ〜り」じゃぁビールのアテにならない事に気がついた。何だ、そういう事だったのかと膝を打つ。

 ひょっとして有名な店なのかも、と調べてみたところ、歌手のaikoが昔通ったオススメの店らしい。粉モンの街大阪に越して来てはや一年。身近なところでお気に入りの一軒と出会えた。嬉しやウレシヤ。今度はお店で生ビールでも飲みながら、焼きたてを頬張ることにしよう。