栗ごはん


 秋のおいしいものは山ほどあるが、キングはやっぱり松茸だろう。土瓶蒸し最高、焼き松茸は贅沢の極み、松茸ご飯に松茸のお吸い物、どれをとってもキング・オブ・秋の味覚。だれもが認めるところは人様に譲ることにして、あえてここで押すのは栗ご飯。

 昔は栗ご飯が好きではなかった。パサパサして味気ない、何コレ?そんな印象だった。栗ご飯を美味しいと思ったのは大人になってから。家族で遊園地に行った帰り、駐車場に栗の木があって、その下に栗が落ちているのを子供が見つけた。「あーっ栗がある!」子供達と一緒に栗拾いが始まった。あちこちに落ちているイガを見つけては「からっぽ」「これもハズレ」「入ってたー!」としばし栗拾いを楽しんだ。ほんの少ししかなかったけれど、小粒ばかりだったけれど、その日の夕食に食べた栗ご飯の美味しかったこと。自分たちで拾った栗が食卓にのぼるのは子供にとっても格別だっただろう。すてきな想い出が自分を栗ご飯好きにさせた。

 そんな昔を思いながら栗ご飯を作ってみた。スーパーに行けば皮を剥いた栗と味付け汁とごま塩がセットになった「栗ご飯の素」が売っている(喜!)。あとはもち米とうるち米を炊飯器に入れてスイッチを押すだけ。程なく炊き上がった栗ご飯は湯気までおいしそう。ホクホクした栗の甘さが口中に広がり、もち米のしっかりした歯ごたえが嬉しい。かむほどに栗ともち米の甘さが溶け合っていく。ぱらりと振ったごま塩がさらに甘さを引き立てる。ホクホクのモチモチ、モチモチのホクホク・・・。おかず無しで何杯でも食べられる。やさしい秋の味わいはキング松茸ご飯にも負けていないゾ。大体、一人ディナーで松茸ご飯ってのは寂しさ10倍、悲しさ100倍、侘しさ1000倍!!栗ご飯の優しさが心にしみる今日この頃。一人秋をかみしめる夕べだった。

 ちなみにお吸い物が松茸お吸い物(永谷園)なのはご愛嬌。たっぷり作った栗ごはん、冷凍しておいたからまた食べよう。