小さな空港と真っ赤なFDA


 立秋が過ぎ、暦の上では秋。しかし「人間の考えた暦なんか知らんもんね」とばかりに、昼間の太陽は容赦なく暑さを届けてくれる。まだ当分はこんな調子なのだろう、おかげで毎日Beerがすこぶる旨い。

 そんな中、出張で九州に行ってきた。普段は新幹線を利用するのだが、同僚が新幹線より安い飛行機があると教えてくれた。フジドリームエアラインズ、略してFDA。静岡本社の新しい航空会社だ。FDAが発着するのは中部国際空港セントレアではなく県営名古屋空港、昔の名古屋(小牧)空港だ。

 当日朝、 空港までのバスが20分近く遅れ、空港に到着したのは出発の12−3分前。焦りながら受付に向かうと、受付のお姉さんは慌てる様子もなく、にこやかで丁寧。県営名古屋空港は非常にシンプルな造りになっていて、チェックインカウンターのすぐ横に手荷物検査のゲートがあり、ゲートの向こうはすぐに小さな待合室。その一角にある搭乗口の先はもう屋外だ。簡単な屋根付きの通路の奥で係員がチケットをチェックして、後は目の前に停まっている飛行機まで10mほど歩くだけ。バスを降りてからずっと同じフロアで登り降り無し。距離も僅かで小さなバスターミナル位のイメージだ。空港への到着が遅れた身としては非常に助かった。これがセントレアだったら、「福岡行きのお客様いらっしゃいませんかー」と叫ぶ係員のお姉さんといっしょに空港内数百m猛烈ダッシュ、空港ではよく見かける風景だが、体験してみたいとは思わない。下手をしたら搭乗できなかったかも知れない、助かった。

 タラップを登りFDAの真っ赤な機体に乗り込むと、革張りのシートが左右に2列並んでいた。福岡までの所要時間は80分。途中でパンとコーヒーとお菓子のサービスがあり、少し嬉しくなる。快適な空の旅は、予定より5分早く終了した。

 九州での仕事を済ませ、帰りのFDAはピンクの機体。ヘッドレストのカバーには漫画『ちびまる子ちゃん』のイラストが微笑んでいた。静岡県つながりということだろうか。名古屋空港に戻ってきたのは午後9時20分。一つずつある売店とレストランは既に閉まっていて少々寂しげ。人影まばらな待合室のテレビにはロンドン五輪の中継で、日本の女子バレーの奮闘が映されてた。

 名古屋の空の玄関として、長く活躍してきた小牧の空港。自分が生まれて初めて飛行機に乗ったのはこの空港だ。そう言えば新婚旅行も、サイパンやグアムへの家族旅行もここから出発した。2005年に開業したセントレアにその役割をゆずり、今ではこの空港に発着するのはFDAだけ。その規模をグググっと縮小し、小さな小さな空港として頑張っているようだ。帰りのバスは幸い時間通りにやってきて、自宅でバレーの続きを観る事ができた(笑)。