『異邦人』


 一ヶ月ほど前のこと、きっかけは徳永英明だった。溜まった疲れを洗い流そうとサウナに行ったとき、テレビに徳永英明が出ていた。女性歌手のカバー曲を集めたCDが好評だという。家に帰り、You Tubeを覗いてみたら見覚えのあるタイトルがずらりと並んでいた。そんな中に見つけたのが『異邦人』。その昔、久保田早紀が歌ってヒットした懐かしい曲。ナルホド、彼が唄うとこうなるか。久保田早紀のオリジナルもあった。曲はもちろん、映像もサウンドも昔懐かし。良い曲だ。そんな時目に入ってきたのが中森明菜の名前。彼女がこの歌を唄うとどうなるのだろう。興味深々でクリックしてみた。

 1980年代、中森明菜は日本の音楽シーンの中心で輝いていた。多くのヒット曲に恵まれ、押しも押されぬ大スターだった。自分は別に彼女のファンではなかったし、特別に注目していたわけではなかったが、普通に生活していれば彼女の歌声は各種メディアから毎日聞こえてきた。その名を聞かなくなって久しいが、その後も活動をしていたのだろう。長く忘れていた。

 中森明菜の唄う『異邦人』は穏やかで優しかった。彼女の多くのヒット曲に共通する「ツッパリ風」は影をひそめ、『DESIRE』のような、大げさなビブラートも使っていない。柔らかくマイルドなのだけれど少しハスキーな歌声。この曲のもつエキゾチックな雰囲気に情感と女性の優しさが加わり、久保田早紀の硬質で透明感のある歌声とは全く違う趣があった。

 とても気に入ってしまい、この曲の入った『歌姫ベスト』なるアルバムを注文してしまった。ベスト盤は基本的に買わないのだけれど、たまには良いだろう。山口百恵テレサ・テン井上陽水らのヒット曲が並んでいて、どの曲も『異邦人』同様、オリジナルとは違う魅力に溢れていた。中でもユーミンの『魔法の鏡』と松田聖子の『瑠璃色の地球』を気に入ってしまった。

歌姫ベスト~25th Anniversary Selection~(初回限定盤)(DVD付)
アーティスト: 中森明菜, 松山千春, 井上陽水, さだまさし, 荒木とよひさ, 久保田早紀, 松本隆, 谷村新司, 荒井由実, 山川啓介, 永六輔
メーカー/出版社: ユニバーサル シグマ
発売日: 2007/01/17
ジャンル: ポピュラー音楽