お引越し3

 大阪に来て1年と7ヶ月が経った。勤め先の大阪支店勤務を命じられて始まった単身赴任生活だが、それが終わろうとしている。この4月から名古屋にある本社に転勤となったのだ。名古屋に出社するのは4月からなのだが、月末最後の週末は仕事関係の引越をするため、1週間早くマンションを引き払うことになったのだ。

 日曜午後からの引越なので、荷造りを始めたのは土曜の夜10時過ぎ。4時間半の睡眠をはさんで、延々と荷物と格闘した。ここに来た時は大きめの段ボール4つだけだったのだが、荷物というのは増えるものだ。買い集めた本やCD、そして衣類。単身ゆえ洗濯をできるのは週末のみで、週末が雨だったりすると翌週困ったことになるため、ワイシャツや肌着、靴下などの増強に努めてきたためだ(ちなみに普段着やスーツは殆ど増えていない)。パソコン関連、スピーカー、食器、靴、仕事の資料・・・・。引越業者が余裕を見て置いていった段ボール箱、大小合わせて20個が全て一杯になった。

 まだ全ての段ボールが完成する前に引越業者がやって来た。担当してくれたのは50がらみの渋いおっさんと、鹿児島出身の好青年の二人組。本の詰まった重たい段ボールも軽がると持ち上げ、軽いものは2つ一度に運び出す。分解したベッドや本棚にスッポリかぶせる伸縮自在の大きな腹巻のようなクッションは優れものだ。荷物が一つ一つ運び出されるたびに、部屋がだんだん広くなっていく。最後は身の回りのものを詰めたスーツケースとブリーフケース、ガーメントバッグだけになった。

 トラックを見送りゴミを捨て、戻ってきた部屋は空っぽの空間。初めてやってきた夏の日もこんな風だった事を思い出しながら、雑巾で床に残ったホコリを軽くふき取った。1年7ヶ月お世話になったこの部屋に心の中で礼を言って鍵をかけると、少ししみじみした気持ちになった。荷物の受け取りは妻子に任せてあるので、今夜からは1週間のホテル住まいだ。