月夜のフェリー


 この前の木曜日、出張で佐賀県に行った。早朝の飛行機で福岡空港まで飛び、あとはJRでの移動。この日JR九州は運行管理システムの障害で、朝から大幅にダイヤが乱れていた。博多駅はもちろん、乗り換えの鳥栖駅でも多くの乗客が待ちぼうけ。午前11時、屋外のホームには冷房も無く、少し動くと汗が噴き出る。日光を遮る屋根と、時折吹き抜ける心地よい風が本当にありがたかった。幸いアポイントは午後からだったので問題無かったが、あんなに混雑した鳥栖駅は初めて見た。

 夕方、まだダイヤの乱れているJRで佐賀駅から小倉まで移動。すっかり夜になった小倉の駅前に広がる「魚町銀天街」は日本で最初のアーケード付商店街なのだそうだ。夏祭りの太鼓が響いてとても賑やかだ。移動中に調べた焼きうどんの「だるま堂」を目指すが残念ながら閉まっていたので、ぷらっと入ったお店で腹ごしらえをして、向かったのは駅の反対側にある港。今回の出張では翌日が四国松山なので、移動の方法として夜行のフェリーを選んだのだ。

 薄暗いフェリー乗り場に停泊している「はやとも2号」。これが今夜の宿だ。スロープを登って乗船。船内の階段を上っていくと船の中央部にあるパブリックスペースに出た。ここには案内所や土産物売り場、自販機コーナーやゲームコーナーなどがあり、結構にぎわっている。居酒屋スペースもあって、出港前から盛り上がっているオッチャン多数。イイ感じだ。まずは寝床を確認しようと客室へ。事前に予約を入れておいたのは、1等客室。1等と言っても5等級ある内の真ん中クラス。6人相部屋で、客室内には二段ベッドが3つと洗面台、TVがある。浴衣に手ぬぐい、歯ブラシも用意されているので、相部屋であることを除けば、ちょっとしたビジネスホテルのようだ。これで運賃込み9,300円はお値打ちと言えよう。21時55分、はやとも2号はゆっくりと出港、そしてふと気が付いた。あれ、自分一人??…どうやら6人分のスペースを一人で使わせていただけるらしい。たまたまお客が少なかったのか、いつもこうなのかは謎だが、気兼ねなく過ごさせてもらえるのは嬉しい。この船にはお風呂もついていた。家庭用の2倍程の大きさの湯船に洗い場が2つ。汗を流して広い湯船につかると、わずかに船の揺れが感じられ、不思議な感覚だった。

 部屋に戻って窓のカーテンを開けると、ちょうど真正面の空に月が白く輝いていた。月明かりに照らされた小倉の町がゆったりと右側へ流れていくのを眺めながら缶ビールの一時。瀬戸内の海路は穏やかで静かだった。はやとも2号は予定通り翌朝5時に松山観光港に到着。初めての夜行フェリーはとても快適、機会があればまた乗ってみたい。今回は一人でゆったりできたけれど、相部屋の人と一杯やるってのもイイかもね。


客室はこんな様子