『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』


 前からずっと観たかった映画。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』をやっと観る事ができた。1999年に公開されたこのドキュメンタリー映画については既に語り尽くされているだろうけど、世界にもう一つ感想が増えたからって悪いことじゃぁない。

 社会主義国キューバの老ミュージシャン達が演奏し歌い、それぞれの半生を語る。半生なんてのは生ぬるい、半分はとうの昔にすぎている。人生の8割9割を終えたプロフェッショナルの言葉は重い。抗いようの無い説得力がある。そしてその演奏。円熟、熟するってこういうことなのだろう。耳に聞こえるのではない、心に迫ってくる。

 さて、我が身を振り返ってみると、今までずっと「現在」の自分が自分史上最高だと思って生きてきた。確かに記憶力のピークはとうに過ぎたし、運動能力のピークなんてのは四半世紀前の事だ。けれど人間としての総合力では進化・発展し続けていて差し引きプラス、右肩上がり。幻想かも知れぬが、今日もそう信じて生きている。しかし、そう思えなくなる日がきっとくる。限界を感じ、自分自身の進歩が感じられなくなる。若いヤツに追い抜かれる・・・。間違いなくきっと来るそんな日、この映画を思い出したい。どんなに努力しても進歩できなくなったとき、円熟が始まるのだろう。何かが足されるのではない。増えはせずむしろ減る。円熟とはその人の中でいらない物が無くなり大切な部分が研ぎ澄まされることなのではなかろうか。そして円熟はステキに美しい。
ブエナ☆ビスタ☆ソシアル☆クラブ(フィルム・テレシネ・バージョン) [DVD]