ウィキッド


 この前の水曜日、劇団四季のミュージカル、WICKED(ウィキッド)を観てきた。場所は名古屋市中区、堀川端にある新名古屋ミュージカル劇場。1995年オープンの常設劇場、1階H列21番はほぼ中央の良い席だ。

 ブロードウェイから全米、そして世界各地で上演され、日本では劇団四季が東京、大阪、福岡で上演してきたので、ご覧になった方も多かろう。舞台は魔女グリンダが治める魔法の国オズ。竜巻によってやってきたドロシーの活躍で悪い魔女が倒され、オズには平和が戻っていた。平和の日々を享受する人々は、しかし、一つの疑念を抱いていた。誰もが愛する魔女グリンダが、実はあの悪い魔女と友達だったという噂があるのだ。有名な『オズの魔法使い』の前段、エピソード・ゼロが語られる・・・。

 豪華なセットと魅力的な役者陣、音響や照明もさすが。中でも緑色の肌をした悪い魔女エルファバ役の岡村美南の歌は素晴らしかった。張りのある伸びやかな声、正確な音程、強弱のニュアンスも申し分ない。回りからの攻撃をはねつけるエルファバの強さや、その裏にある悲しみを見事に表現していた。演技の事はよくわからないが、歌では完全に他の役者を食ってしまっていたように聴こえた。信念、友情、愛、そして善と悪。そんなあれやこれやがちりばめられた、華麗な舞台だった。

 終演後の道すがら、勤め先の後輩二人と感想を交換する。学生時代ダンスの経験のあるM君は、やはり踊りに目を奪われたそうだ。曰く「踊りに芯が通っている」。やはり目の付け所が自分とは違うのが面白い。ちなみにもう一人、同行のH君はダンスシーンで女優さんのスカートが広がるのが気になって仕方なかったとの事・・・。彼もまた目の付け所が違う(笑)。

 この日の観劇は勤め先の春の行事。3月に山本能楽堂『初心者のための上方伝統芸能ナイト』を観に行ったのも勤め先の春の行事だったのだけれど、4月から異動で名古屋勤務となったため、有難いことに両方で参加させてもらえたわけだ。とは言うものの、異動前後のバタバタが続き、ほぼ1ヶ月休日無し。心がカナリささくれ立っていたのも事実。華麗な舞台と歌声は一時の間忙しさを忘れさせてくれた・・・それこそ魔法のように。おかげで仕事も気持ちも少しずつ落ち着いてきたような気がする。