『12モンキーズ』


 死のウィルスによって全人類の99パーセントが死滅した近未来。生き残ったわずかの人間たちはウィルスの難を逃れ、地下都市での生活を余儀なくされていた。そんな未来から現代のアメリカに送られてきた男、ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)。彼の使命はウィルスをばら撒いた秘密の軍団「12モンキーズ」と接触し、ワクチン製造に必要な純粋なウィルスを入手すること。未来の地下都市では終身刑を言い渡された囚人なのだが、その高い観察眼と強靭な精神能力を買われたのだ。1990年のアメリカでジェームズと出会った精神科医のキャサリン・ライリー(マデリーン・ストウ)は最初彼を妄想癖の患者として扱うが、様々な状況証拠を目の当たりにするうち、彼の話を信じざるを得なくなる。一方のジェームズは二つの時代を行き来するうちに、どちらが現実なのか分からなくなる。12モンキーズも死のウィルスも夢なのではないか?しかし12モンキーズは着々と破滅への準備を進めていたのだった・・・・。タイムトラベルを軸にしたSF。テリー・ギリアム監督1995年の作品だ。

 ほんの数百年前、交通機関が発達する以前は地理的な移動にも大きな制約があった。四方を海に囲まれた島国日本ではなおさらで、生まれた村とその近郊だけで一生を終える日本人は少なくなかっただろう。現代では政治的意味を別にすれば地理的移動は誰でもできる簡単なことになった。飛行機を使えば地球の反対側へも軽々と行けるようになり、海外への旅行や出張は普通のことだ。老後は南の島で・・・などという生き方だってできる。しかし時間的な移動はまだ不可能だ。将来タイムマシンが発明され、時間的な移動が普通なことになったらどうなるのだろう。考古学の手法は大いに変るだろうし、占い師は失業するだろう。「うちのお父さん室町時代に単身赴任なのー」「老後は中生代白亜紀でひっそりと暮したい」こんな事を話すようになるのだろうか。夢のまた夢のような話だが、「2泊3日で中国出張」なんて奈良時代の遣隋使のメンバーには絶対に信じられないだろう。技術の進歩は人間の考え方を大きく変えるのだ。

 地理的移動が簡単になって、地球規模の考え方が可能となり、必要となった。これと同様に、時間的移動が簡単になったらそれを前提として新しい考え方が生まれるはず。取り返しのつかないことの取り返しがつくようになり、新たな利権や犯罪、ルールも作られるだろう。そんな中、人間はどんな価値観を持って生きているのか。かなり想像力を働かせても明確にイメージすることは難しい。奈良時代の人たちと同じだ。タイムトラベル物のSFに触れると、ついついこんな事を考えてしまう。

12モンキーズ [DVD]

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