神田まつや


 久しぶりの東京、1泊2日の出張だ。部下と二人で都内のお客さん6軒を訪問し、日帰りで大阪へ戻る部下をねぎらって居酒屋で軽く一杯飲んだ後、一人訪ねたのが神田まつや、老舗の蕎麦屋だ。実はこの店を知ったのはつい最近。敬愛するdeep_double_mさんがブログで紹介してくれたのを拝見し、ぜひ行ってみたいと思っていたのだ。

 暖簾をくぐり入った店内は思いのほか賑わいを見せていた。カップル、仕事帰りのビジネスマン、旅行者と思しき若い女性のグループ、年配のご夫婦、客層は幅広い。席に案内され注文を問われると、迷わずもりそばとお銚子をお願いする。待つことしばし、お銚子と一緒に出された小皿には蕎麦の実の入った赤味噌。これをお箸でつまみ舐めながら手酌で甘口の熱燗をいただくと、粋な江戸っ子になったような気分で楽しくなった。

 程なく出されたもりそば、お待ちかねのひと時だ。はやる気持ちを抑えつつ、あわてずゆっくり蕎麦を手繰り、つけ汁にチョイと浸して一気にすする。よく冷えた蕎麦の硬質な感触と、出汁の風味が口の中に広がる。薄口であっさりした味付けのつけ汁がお酒によく合って熱燗もすすむ。小皿に盛られたネギを加えてみると、出汁の旨みと薄口のかえしとネギの風味と蕎麦の香りとが、何とも良いバランスだ。薬味はネギだけだったのだけれど、ナルホド、ここに山葵の出番は無いと納得した。

 閉店間際に駆け込んだのだけれど、店員さんは至極丁寧に対応してくださった。暖簾に恥じぬよう、よく教育されているのだろうと感心した。早春の東京の夜、一人伝統の味を堪能した。

神田まつや

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