麻婆豆腐


 マーボー飯が好きだ。地元にいたときはよく食卓に登場したし、仕事の合間のランチで中華に行った時なども注文することが多い。休日の夕食、思い立って作ってみた。

 作ったと言っても大した事はない。「麻婆豆腐の素」という強い味方が売られている。これに水を足してフライパンで一煮立てし、絹ごし豆腐を合わせ一煮立て。火を止め、別袋の「とろみの素」を水で溶いたものを回し入れてもう一度煮立てれば出来上がり、ムチャクチャ簡単だ。自分の場合肉ひき肉を増量したいので、最初にフライパンで豚ひき肉を軽く炒めながら塩コショウ。酒で煮立てた後オイスターソースとおろしニンニクを一さじ加えたところに、上記の「麻婆豆腐の素」を加える・・・という順番になる。そしてきざみネギを大量に加え、ご飯にかける。仕上げに特製七味唐辛子をパラパラとかけて出来上がり。それでも簡単だと思う。

 麻婆豆腐をかけるご飯は固めにかぎる。マーボーに限らず、中華飯でも牛丼でも天丼でも鰻丼でも、どんぶり系の食べ物全般について「ご飯は固め」と決めている。柔らかく炊いたみずみずしいお米は美味しいのだけれど、丼物の場合は別だ。丼物はメインである具材とベースとなるご飯、そしてその二つをつなぐ汁の3つのハーモニーが肝心。柔らかすぎるご飯は具材と汁との間で存在感が無くなり、グチャグチャドロドロの汁の一部と化してしまうのだ。三つの内の2つが一緒になってしまったら台無しだ。3声のコーラスを歌っていて、1人が誰かにつられてしまって2声のコーラスになってしまったようなものだ(変なたとえだ)。一方、固めに炊いたご飯は存在感がある。口の中でも一粒一粒がシッカリ自己主張している。そして固めのご飯はよく汁が染みる。うっかり具材を全部食べてしまって、ご飯だけが残ったとしても、それはそれで大そう美味しく食べられるのだ。以前お店で頼んだ鰻丼のご飯があまりに柔らかすぎたので腹が立ち、鰻だけ食べて帰ってきたことがある。自作の場合は始末が悪い。腹は立つけれど減ってもいる。怒る気力もない。そして文句を言う相手は自分、泣きたくなる。

 今回のマーボー飯、ご飯はシッカリ固めに炊きあがり美味しくいただけた。「麻婆豆腐の素」(ちなみに丸美屋の中辛)は本当にありがたい。