天神橋筋商店街


 天気の良い日曜日、地下鉄に乗って目指したのは天神橋筋商店街、日本一長いことで有名な商店街に一度行ってみたかったのだ。淀屋橋で地下鉄を下り、地下通路を北浜まで。そこから地上に出ると日差しがポカポカと暖かく、とても上着を着ていられない。東へしばらく歩いているとダウンジャケットを着た若者とすれ違った。冬物コーディネートなので上着を脱ぐわけにいかないのだろう。お洒落をするのは大変だ。次にすれ違ったとてもお洒落には見えない中年男性はロングコートを着ていた。あの下はパジャマに違いないと思った。天神橋で土佐堀川を越えるとすぐに商店街の入り口があった。全長2.6キロ、日本一長いこの商店街を南から北へと歩いてみるのだ。

 ちょうど昼時だからか、アーケードの下は思ったほど混雑していない。どこにでもあるような普通の商店街なのだけれど、アーケードがはるか彼方まで続いているのが見える。確かに長そうだ。右手に大阪天満宮が見える。行ってみると境内では梅まつりが開催されていて、たくさんの屋台が出ていた。天満宮の隣にあるのが「天満天神繁昌亭」。上方落語を毎日聴かせてくれる常設の寄席だ。当日券2500円を買い、午後1時からの昼席を聴くことにする(詳細は後日)。寄席での楽しい一時はあっという間に過ぎ、外に出るともう夕方で少々肌寒い。気を取り直して天神橋筋商店街を北へと進んだ。

 喫茶店、ラーメン屋、たこ焼き、うどんにお好み焼き。洋服屋、帽子屋、靴屋。八百屋、魚屋、肉屋にスーパー、本屋に文房具屋、スポーツ用品店。理容美容、薬局に病院、マッサージ店もある。銀行や不動産屋、占いの店やカラオケ喫茶、呉服屋さんもあった。本当、ありとあらゆるお店が軒を連ねている。面白かったのはカセットテープがずらりと並んだレコード屋さん(?)。CDもあったけれど、壁一面に並べられたカセットテープは圧巻。やはり演歌が大半だった。

 確かに日本一長い商店街なのだろうけれど、部分部分を見るとごくごく普通の商店街だ。日本一の長さを売りにしているとはいえ、物を売る人と物を買う人が集う、商店街本来の姿がそこにあった。逆に言えば、昔ながらの普通の商店街が、普通に賑わっていること自体、今や珍しいのかもしれない。大阪市内で同様に賑わっている心斎橋筋商店街と比べると、天神橋筋商店街は生活との密着度合いがより強く感じられた。心斎橋筋商店街はショッピングを楽しみに電車に乗って出かけて行くイメージだが、天神橋筋商店街は近所の人が「お昼、お好み焼きにしようか」とか言ってサンダル履きで買いにいったり、休日のお父さんが「ちょっとパチンコしてくる」と言い残してぶらりと出かけていくイメージだ。近所の子なのだろう、中学生くらいの男の子2人が、自転車に腰掛けてお好み焼きを食べていたのがとても美味しそうだった。

 昼過ぎに歩き始めたのだが、途中大阪天満宮天満天神繁昌亭で4時間ほど寄り道したので2.6キロの商店街を歩き終えたら夕方の5時前だった。立ち飲み屋のちょうちんに猛烈な引力を感じつつ帰路についた。長〜い商店街を歩いた、長〜い一日だった。