『プリンス・オブ・ペルシャ』


 2010年のアメリカ映画『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』を観た。映画の舞台は大昔のペルシャ。シャラマン王には三人の王子がいた。二人は実の息子だが、第三王子のダスタン(ジェイク・ギレンホール)は王家の血を引かぬ養子だった。三人の王子は遠征の途中、王の命に背き、聖なる都アラムートを攻める。アラムートが武器を密造し、ペルシャの敵国に売っているという情報を入手したためだった。ダスタンの活躍でアラムートは陥落し、三人の王子は聖なる都へ入城する。ここでダスタンは美しく輝く短剣を手に入れたのだが、それは時を戻すことができる「時間のダガー」だった。一方、武器密造の情報の裏づけとなる証拠は見つからず、シャラマン王は王子たちの勝手な行動を叱責する(情報を元に攻撃し、征服してはみたが、証拠が見つからない・・・どこかで聞いたような話だ)。しかしそんな折、王は毒殺されてしまう。嫌疑をかけられたダスタンはアラムートの王女タミーナ(ジェマ・アータートン)と二人、城壁の外へと逃げ出す。追う兵士達と逃げる二人。しかしその裏には「時間のダガー」を巡る大きな陰謀があった・・・。

 同タイトルのゲームの世界を実写の映画にしたのもで、ゲームの作者がこの映画の製作者に名を連ねている。ストーリーはオリジナルらしいが、こういうパターンもありなのだと驚いた。「時間のダガー」がストーリーの要なのだが、見所は他にある。ダスタン王子ことジェイク・ギレンホールのみせるアクションシーンがその一つ。戦闘のシーンや逃げるシーンで、街の中を縦横無尽に駆け回り、跳び回る。これはパルクールというスポーツの動きを取り入れたアクションで、『K-20 怪人二十面相・伝』金城武がやっていたのと同じもの。道から壁へ、壁から屋根へ、駆け上り飛び降りる。躍動感あふれる画面に目が釘付けになってしまう。もう一つの見所は細部まで作り込まれたセット、小道具、そして衣装。ロケ地モロッコの職人たちの手によるもので、それは見事なものだ。街の喧騒、人々のざわめき、はるか彼方、遠い昔の異国へタイムスリップしたような気分が味わえた。

 時を戻して「あの時」に戻りたいという願望。少年少女の夢ならば可愛らしいが、大人がそれを考えると、どうもドロドロとしていやらい事になってしまう。時は戻せないからこそ貴重なのだ。