『センター・オブ・ジ・アース』


 2008年7月公開のアメリカ映画。『ハムナプトラ』のブレンダン・フレイザー演ずる地質学者トレバー・アンダーソン教授は、アイスランドでの調査中に洞窟に閉じ込められてしまう。同行した甥のショーン(ジョシュ・ハッチャーソン)、山岳ガイドのハンナ(アニタ・ブリエム)とともに出口を求めて進むのだが落盤にあい、地底深くまで落ちてしまう。命からがら3人がたどり着いたのは、まさにジュール・ヴェルヌの『地底旅行』の世界だった・・・・。

 予備知識ゼロで観たため後から知ったのだが、この映画は3D作品だった。日本で全国公開された最初の実写フル3D映画なのだそうだ。なるほど、そうだったのか。荒唐無稽すぎてリアリティーに乏しく、実は少々退屈な印象を受けたのだが、ストーリーや登場人物の心の動きより何より、3Dの映像を楽しむための映画だったのだ。ノートパソコンの小さなディスプレイでは退屈に思えた場面が、本当は3D映像の見せ場だったのかもしれない。そういえば思いあたる場面がいくつかある。美人山岳ガイドのハンナと出会う場面、突然の来訪者であるトレバーとショーンの二人を自宅に迎え入れるのだが、不自然に胸の切れ込みの深い衣装は実は3Dの見せ場だったのかも!地底世界でタンポポの綿毛を吹くシーンもきっとそうだ。この映画の良いところ、制作サイドが一番努力し工夫を凝らした部分を全く味わっていなかったのだ。カラー番組を白黒TVで観るようなもの、オペラをCDで音楽だけ聴くようなものだろうか。残念だ、もったいない。

 テクノロジーの進歩は芸術文化を変える。19世紀、人々が豊かになり音楽を楽しむ人口が増えると、より多くの聴衆に迫力あるサウンドを届けようと、オーケストラは肥大化した。ところが現代では数名のバンドの奏でる音が1万人以上の聴衆を熱狂させる。マイクとアンプ、電子楽器あればこそだ。今に映画もテレビ放送も3Dが当たり前になって「昔の映画は絵みたいに平面的な映画だったんだって」「ウッソー、信じられない!!」なんて会話がなされるのかも・・・。新しいテクノロジーを受け入れられるのはいつの時代も若い世代だ。受け入れられない世代は「最近の○○は全く理解できん」と昔を懐かしむ。遠くない将来「3Dじゃない昔の映画の方が趣きがあったよなぁ・・・」なんて言ってる自分がいたりして。でも歴史とか進歩とかっていうのはそういうものだろうと思う。

 ノートパソコンの小さなディスプレイで観たのでは楽しさ半分だったのだろう。いつか大画面の3Dで観てみたい。

センター・オブ・ジ・アース [DVD]

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