秋の日の奈良


 よく晴れた秋の休日、奈良に出かけた。地下鉄から近鉄に乗り換えて大和西大寺駅まで、部屋を出てからちょうど一時間。電車を降り、ここから目指すのは平城宮跡。無料シャトルバスも出ているが、およそ15分の道のりを歩くことにした。奈良に都のあった時代、国の中心であり天皇の住まいのあった平城宮跡。以前訪れた時は雨降りだったこともあって人影はなく、昔の賑わいは今いずこ…といった寂しい印象だったが、今年は「平城遷都1300年祭」。メイン会場でもある平城宮跡は大変な賑わいだ。

 復元された大極殿が秋の陽を浴び輝いている。44m×20m、高さは27m。朱塗りの柱が美しく、周囲に建物が無いため壮大な印象を受ける。10分ほど並び入場。中ではボランティアによる解説を聞く事ができた。天皇即位式や外国からの使節との謁見など、当時最重要だった国事の数々が行われた建物なのだそうだ。復元にあたっては設計図も絵も無く、当然の事ながら見た人も今はいない。柱の跡などから外寸を特定し、現存する当時の建物や文献の記述から時代の様式を汲み取り、絵や資料の残る平安京大極殿を参考にして設計されたそうだ。これってスゴイ事だと思う。絶対正解の分からないことに挑んで形にしてしまうというのは、さぞかし骨の折れる作業だっただろう。想像するに各方面からの風当たりも強かったのではないだろうか。この建物、足元には免震装置が組み込まれているそうだ。建築に当たっては場所柄杭を打つことができないため、そうしないと現代の建築基準法にひっかかるらしい。なるほど!

 午後は無料シャトルバスで奈良駅まで移動し興福寺へ。今年3月にリニューアルされた国宝館に有名な阿修羅像と会いに行く。阿修羅は元々仏教とは無縁のインドの神様だったのだが仏門に帰依し、釈迦を守る守護神「八部衆」の一人となったのだそうだ。照明を抑えた館内、他の八部衆の像と並び阿修羅像が浮かび上がる。凛とした佇まい、悲しげな表情と華奢な体つきが見る者の心を引き付ける。同じ八部衆の一人、迦楼羅像(かるらぞう)は顔が鳥で体が人間、カッコイイ!

 観光で奈良を訪れたのは3度目。都でなくなった後は歴史の表舞台から身を隠したような奈良。実際はそこに住む人はいて、生活があったのだろうけれど、何か昔のままの空気が残っているような、そんな奈良の雰囲気が好きだ。