『マルタの鷹』


 タイトルの「マルタの鷹」とは16世紀にマルタ島を譲り受けた騎士セント・ジョンがスペイン王に贈った宝石をちりばめた黄金の鷹の像のこと。この鷹の像を探す男達と女の物語。主役の私立探偵スペードを演じるのはMr.ハードボイルド、ハンフリー・ボガート『カサブランカ』の1年前、ボギー42歳の1941年に公開された作品だ。

 スペードの事務所に一人のとびきり美しい依頼人(メアリー・アスター)が訪れる所から映画は始まる。彼女はサースビーという男と駆け落ちした妹を捜して欲しいという。捜索を始めたその晩、スペードの相棒マイルズは死体で発見される。サースビーも何者かに殺されていた。警察の嫌疑は何とスペードに向けられる。翌日スペードが美人依頼主の元を訪ねると、彼女は昨日の話は嘘だという。その訳を訪ねるが彼女は頑として語らない。一方同じ日にスペードの事務所をカイロと名乗る男が訪ねてくる。5000ドルの謝礼で黒い鳥の置物を捜して欲しいというのだ。「5000ドルといえば大金だ・・・」訝しがるスペードに、カイロは拳銃をつきつける・・・。

 原作はアメリカの推理小説作家、ダシール・ハメットの小説。「ハードボイルド」というスタイルを確立した作家なのだそうだ。そしてこの映画でハンフリー・ボガートはハードボイルド俳優の地位を確立した。当時としては思い切った表現だったのだろう。確かにストーリーの展開は速いし、殆ど笑わずタバコを吸いまくる。アクションも居合い抜きを思わせる程あっという間にボギーの勝利に終わる。「男は仲間を殺されたら黙っちゃいない」かっこ良いセリフもあった。でも終盤でちょっとしゃべり過ぎているのが非常に残念。言う時は言う!ということなのだろうが、饒舌ぎみなハードボイルドはチョット・・・。『カサブランカ』のボギーの方が格好良かったなぁ。

マルタの鷹 特別版 [DVD]

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